第6回防災グローバル・プラットフォーム会合が2019年5月13日~17日にスイスのジュネーブにて開催されました。スイス開発協力庁長官のマニュエル・セイジャー(Manuel Sager)氏と水鳥真美・防災担当国連事務総長特別代表が共同で議長を務めました。182カ国からの参加者が出席しました。
防災グローバル・プラットフォームは、国連総会により設置された隔年開催のマルチステークホルダー会合です。会合は、防災への取り組みにおける進捗を確認し、知見を共有し、また最新の進展や動向を巡って議論する場となっています。
「強靱化の効果:持続可能でインクルーシブな社会に向けて」をテーマにした同グローバル・プラットフォームは、国連持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム2019および国連気候変動サミット2019に重要な貢献をすることが期待されています。同グローバル・プラットフォームはまた、「仙台防災枠組2015-2030」の7つの目標達成に向けて行動を加速するよう呼びかけ、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」達成のための防災の重要性、そしてパリ協定、「人道への課題」、「ニュー・アーバン・アジェンダ」および「小島嶼開発途上国行動モダリティ推進への道」への仙台防災枠組による貢献を強調しました。
国際協同組合保険連合(ICMIF)のショーン・ターバック事務局長は、5月16日木曜日に開かれた同プラットフォームの「強靭化効果を引き出す」ための作業部会に世界中から集まった著名なパネリストらとともに参加しました。ターバック事務局長にとっては、防災分野におけるICMIFおよび会員団体の取り組みを共有できる良い機会となりました。
防災活動において相互利益を引き出すこと、および強靭化の効果が同部会のテーマでした。パネリストらが注目したのは、仙台防災枠組の目標達成に向け、開発、貧困削減、財政安定、および持続可能な経済成長にとって防災投資が不可欠な要素となることがどれだけ重要か、という点でした。同部会は強靭化効果を取り巻く最新動向を持続可能な財務や開発金融も含めて探りました。また、防災によって得られる経済・社会・環境上の恩恵を引き出して増進させるという、特定のセクターにおける具体的機会を巡り熱心に議論が交わされました。
ターバック事務局長は、「環境、金融および民間部門を含めた経済界全体にわたり、強靭化の潜在的効果に対する認識は高まっています。防災活動の理解という観点からは進展がまだ遅いと見られる分野も存在し、多くの投資は起こり得るリスクをいまだ十分に考慮していないものの、より持続可能な企業行動へのニーズが高まりつつあることに我々は気づいています。強靭化の観点からすれば、同部会はICMIF会員による革新的取り組みを伝える絶好の機会でした」と述べました。
ターバック事務局はまた、「ICMIF会員団体の多くは地域社会に根差した組織で、地域社会のために地域社会の中で働き、地域住民にとって信頼の置ける、災害に強い環境づくりに取り組んでいます。こうした組織は人々の力に支えられ、目的に導かれ、利潤追求に限ることなく価値観に基づいた戦略を導入しています。ICMIF会員はもちろん、保険組織として保険金を支払うために存在するわけですが、さらに重要なのは、こうした組織が地域社会をより安全な場所にし、生活への打撃からより早く立ち直ることができる強靭な社会にするために存在するということです。我々は保障よりも予防をより重視しています」と続けました。
ターバック事務局長は与えられた発言時間の中で、ICMIF会員による強靭化のための先進的取り組みについて伝えました。例として挙げられたのは、コーポレーターズ社およびデジャルダン・グループ(ともにカナダ)、セキュリアン社(米国)、サンコー・セグロス(アルゼンチン)、フォルクサム社(スウェーデン)、ウニポール社(イタリア)、アクメア社(オランダ)、JA共済連(日本)そしてCARD MBA(フィリピン)などです。また、ICMIFの5-5-5相互扶助のマイクロインシュランス戦略の効果に関しても触れ、5カ国ブロジェクトに含まれるインド、フィリピン、スリランカおよびケニアにおいて脆弱なコミュニティとICMIF会員団体が協力して防災の改善に取り組んだことを述べました。ICMIFは、相互扶助のマイクロインシュランスを5年間にわたり5カ国(コロンビアでは今年開始予定)で展開し、低所得層500万人の保険加入を目指す、5-5-5相互扶助のマイクロインシュランス戦略(「5-5-5戦略」)を始動させました。究極の目的は低所得者層を貧困から救い出すことです。
国連国際防災戦略事務局(UNISDR)は同会合を締めくくるにあたり、グローバル・プラットフォーム2019において仙台防災枠組の実施状況評価に寄与した要素として、加盟国から「仙台防災枠組モニター」に提出されたデータ、国連世界防災白書2019(GAR 2019)による分析、および「国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の「1.5℃の地球温暖化に関する特別報告書」や「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」による報告書など最近の報告書を挙げました。
国連世界防災白書(GAR)2019の報告書は防災グローバル・プラットフォーム初日に発表され、好評を博しました。GARは隔年に発行される国際的防災白書で、リスク削減に関して最新情報を紹介し、最新動向を見定め、憂慮すべき傾向を明らかにし、行動を調査し、そしてリスク削減の進捗につき発表します。GARは一般的社会規範に挑むことによって、リスクとその削減に関して新たな境地を開いたことで知られています。
UNISDRは仙台防災枠組実施の進捗に言及しました。116カ国が仙台防災枠組モニターを通じて報告しています。これは、リスクに対する理解を深め、リスク情報を活用した上で持続可能な開発目標(SDGs)を実行に移すために、非常に重要な一歩だとUNISDRは考えています。
防災グローバル・プラットフォームは防災を社会・環境・経済的に論証したとUNISDRは述べています。リスク情報を活用した意思決定プロセスは、損失を回避するためだけにとどまらず、強靭化を促進するといった複数の効果をもたらし、その効果は調査に基づいた証拠や実例によって証明されました。しかし、同会合終了後に発表した声明の中で、UNISDRは、実際にはリスク情報を活用した投資・開発決定の適用は今なお例外的であることに言及しています。
リスク情勢は急速に変化しているとUNISDRは指摘します。気候変動・生物学的リスクからサイバーリスクに至るまでさまざまなリスクを考慮しなければなりません。新たな危険が出現したことで、金融、環境、および民間部門がリスクを巡る会話に加わることとなりました。リスクが複雑であり非直線的であることをGAR 2019は強調しています。自然災害や人的災害が及ぼすあらゆる影響とカスケード効果を広く理解することが欠かせません。
同会合終了後にUNISDRが発表した声明によれば、現在の規模やペースのまま活動を続けるだけでは仙台防災枠組の目標を達成できず、そうなると2030年までのSDGsの達成も危ぶまれます。防災グローバル・プラットフォームはこうした課題を認識し、より一層の野心、積極的関与、およびリーダーシップをすべての政府とステークホルダーに要求しました。
連鎖的でグローバルな災害リスクを管理し、発展途上国に必要な支援を提供するためには、国際協力と多角的活動が引き続き重要であるとUNISDRは述べています。それと同時に地域におけるインクルーシブな活動が災害リスクとカスケード効果の管理に成功する方策です。
UNISDRによれば、防災グローバル・プラットフォームが発した何よりも重要なメッセージは、強靭化は報われるということです。強靭化がもたらす恩恵がすべてに確実に届くようにと、あらゆるレベルのリーダーへの呼びかけがありました。持続可能な開発およびインクルーシブな社会の実現には、リスク情報を活用した投資は欠かせません。
来たるICMIF総会(2019年11月12日~15日、ニュージーランド)のいくつかのセッションでは、新たに生まれつつある社会経済的リスクおよび環境リスクを検証し、それらのリスクに対処するために協同組合/相互扶助の保険組織が外部と提携しながら、そしてより広範囲のエコシステムにおけるつながりを保ちながら、緊急で取り組もうとしている方法について検討することになっています。また、ICMIF会員団体は、社内体制を変革し、すべてのステークホルダーを巻き込み、組織全体に持続可能性を定着させることで、こうしたリスクをいかに管理しているかについて共有します。総会に関する詳細についてはこちらをご覧ください。