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ICMIFブログ記事から:2020年 保険会社にとり最も危険なリスクとは – ウィリスリー

Willis Re社(ICMIF協賛会員)のエグゼクティブ・バイスプレジデントであるDave Ingram氏によるこの最新のゲストブログを共有できることを嬉しく思います。このブログ記事はもともと Willis Towers Watson WireのWebサイトのために執筆されましたが、Willis Re社のお許しをいただき、ICMIF会員のためここに転載されたものです。
We are delighted to share this latest guest blog by Dave Ingram, Executive Vice President at ICMIF Supporting Member organisation Willis Re. The blog was originally written for the Willis Towers Watson Wire website. The article is reproduced here for the benefit of ICMIF members with the kind permission of Willis Re.
Dave Ingram
Executive Vice President
Willis Re

我われは昨年末、2020年における最も危険なリスクの予想について保険会社の幹部に再び調査を行なった。

100人を超す保険業界幹部を対象としたウィリス・タワーズ・ワトソンの最新調査によれば、「サイバー犯罪」・「破壊的テクノロジー」・「料率設定と利益」の3つが最も危険なリスクとして上位に挙げられた。

4年目となるこの調査は、保険会社の幹部に対し、ビジネスにとって最も危険なリスクと考えるものにつき尋ねている。結果はここ数年あまり変わらなかったが、最新の調査では、最も懸念されるリスクに大きな変化が見られた。昨年の最も危険なリスク上位10のうち5つは順位を下げ(いくつかのケースでは大きくダウン)、従前は低順位だった5つのリスクが取って代わった。

このような変化は一般的であろう。通常、懸念や認識の水準が高くても問題や損失が発生せずに懸念が後退すれば、それらのリスクはこのように順位を落とす。同様に、問題や損失に関する認識の高まりや、いずれ問題や損失が発生するだろうとの恐れを原因として、新たなリスクが順位を上げる。我われは「危険」について尋ねているが、それに対する回答はむしろ「恐怖」に関連しがちである。

アンケートに回答した101人の保険会社幹部が選んだ2020年の最も危険なリスク上位10は次のとおりとなった。

1位 サイバーセキュリティとサイバー犯罪(昨年 2位)

保険会社は、他の業種よりもサイバー犯罪について心配することが多い。保険会社は、自らのビジネスに対する直接的攻撃の日常的な可能性に加えて、自社の保険契約者が被った損失を保障しなければならない場合がある。ケースによっては、サイバー犯罪関連の損失が、契約時にそのようなリスクを想定していなかった、より一般的なタイプの保険において発生することがある。(「CRO(最高リスク責任者)にとってサイレント・サイバーリスクを非常に困難なものにする3つの要因」を参照)

2位 破壊的テクノロジー(昨年 17位)

業界ウォッチャーたちはこの数年間、テクノロジー最大手による保険市場への侵攻を予想してきた。保険向けインシュアテックの提供は2018年に始まり、2019年には急ピッチで増加した。保険会社は、これらのイノベーションの中から取捨選択を行なう必要があるが、それは危険に満ちた決定でもある。

3位 料率設定と商品ラインの利益(昨年 3位)

結果として昨年と同一ランクとなった唯一のリスクである。これより低ランクにある、立法・規制リスク、金利、自然災害に関する懸念はすべて、利益に対する強い圧迫となっている。

4位 立法および規制(昨年 6位)

高度に規制された産業の参加者である保険会社は常にこのリスクを強く懸念している。(米国の)連邦レベルでは、一般的にビジネスにとって有利と考えられる大きな規制変更が行なわれているが、保険会社は通常は州の法律および規制の下で業務を行っており、大半の部分であまり変更がなされない。このような状況は意図せぬ結果として保険会社に大きな問題をもたらす可能性がある。賠償責任保険を扱う保険会社は、不法行為の賠償上限に異議を唱える訴訟について懸念するかもしれない。州がマリファナを合法化しつつあるため、多くの保険種目において新規の保険請求の波及効果がみられる。

5位 ITシステムとテクノロジーのギャップ(昨年 4位、一昨年 2位)

依然として高い懸念事項だが、徐々に下位に移行している。この分野の次なる懸念は、まったく異なる種類のテクノロジーへのジャンプである(上記の「2位  破壊的テクノロジー」を参照)。保険会社は、レガシービジネスを抱えることで、テクノロジーをもつ新興スタートアップ企業との競争で敗れ去るのではないかと懸念している。

6位 金利変動(昨年 26位)

金利は、1年ちょっと前には、保険会社が顧客の資金を(場合により長期にわたり)預かる分野での事業運営が財務的に容易となる水準まで徐々に上昇し続けるように見えた。 しかし2019年にそのトレンドは反転し、2019年末の金利は年初の水準を1%以上も下回り、2018年後半のピーク時に比べほぼ1.5%低下した。

7位 競合(昨年 5位)

保険業界全体の成長は、名目GDPの成長とうまく連動しているが、個別には勝者と敗者が存在する。上位50%の保険会社は平均してGDP成長率の2倍の速さで成長しているが、下位50%は年間平均成長率がほぼゼロであった。今のところ、保険業界に殴り込んで既存各社の利益を奪い取るようなテクノロジー系スタートアップ企業はない。しかし、幹部の大半は、一生懸命に築き上げてきた競争優位性を台無しにするような何かが非常に近いうちに起きるのではないかと懸念している。

8位 自然災害(昨年 28位)

我われは最近、2019年の自然災害の損害への保険支払いは、2018年比で33%、2017年比で44%それぞれ減少したと報告した。このとても好ましい傾向は、自然災害に関する楽観につながる可能性もあると考えられなくもないが、しかし依然として懸念は非常に高いままである。これは、気候の影響による不安定でより深刻な気象的事象が「ニュー・ノーマル」となるのではないかとの疑いの結果かもしれない。

9位 気候変動(昨年 53位)

保険業界ウォッチャーの多くは、気候変動は非常に長いホライゾンを持つが、保険は基本1年単位であると述べている。気候変動からの危険の急激なランク上昇は、保険業界の多くの人がオーストラリアやカリフォルニアの山火事のような実例を見て、リスクの顕在化が始まったと信じていることを示す。そして、州内の火災保険を更新するよう各保険会社に要求するカリフォルニア州保険局のアクションは、気候変動の影響が感じとられる中で、規制当局が気候変動の影響への支出に関して保険会社に助けを求めることを検討していると示唆している。

10位 新興リスク(昨年 15位)

これは、業界の人々が「自分たちが知らない何か別のものが自分たちに襲いかかる可能性がある」と信じていることを意味する。つまり、漠然とした悲運の感覚が存在すること示している。

その他のリスク

新たに6つのリスクが上位10に入った結果、当然ながら6つのリスクが外れたが、これは以前あった懸念が顕在化しなかったか、あるいは顕在化したものの解決されたことを反映している。ランクから外れた主なリスクは次のとおり。

    • 戦略的方向性と逸失機会(昨年1位から今年12位に低下)

このリスクの仮定は、会社を次のレベルに引き上げる絶好の機会が存在する、あるいは出現するだろうというものだった。おそらく、このリスクがここまで低下してきたのは、成功は一つの絶好のチャンスの結果というよりも、数多くの小さな素晴らしい決断と努力の積み重ねであると人びとが理解しつつあるためであろう。

    • 従来型アプローチで対応できない顧客ニーズ(昨年10位から今年31位に低下)

このリスクは最も大きく低下したが、今回2位の「破壊的テクノロジー」でもカバーされている。アンケート手法の若干の変更により、一部の回答者が同じようなことを2度選択することが難しくなった。

    • 事業運営の失敗(昨年9位から今年24位に低下)

このリスクへの懸念は2018年と2019年に高まったが、今回は2017年のレベルまで戻った。過去2年においては、多くの保険会社が採用した新しいクラウドベースのコンピューティング・アプローチが、昔からのやり方ほど安全ではないという懸念があったものと考えられる。そして数年間の危惧を経て、否定論者たちは主要なクラウドベースのサービスには、多分従来のシステムよりも優れた回復力が組み込まれているであろうことを悟ったのである。

    • 人材および従業員と関係(昨年7位から今年13位に低下)

保険会社の多くは、ベビーブーマー世代の引退により数十年にわたる貴重な経験が失われるのではないかと恐れていた。一部の保険会社は、物事には常にトレードオフがあることに気づきつつある。退職者の発生は、従来からのやり方を維持し続けることを難しくするが、その一方で若い従業員は柔軟性が高く、将来必要となる新たなプロセスにとって適切なスキルを持ちトレーニングを積んでいる可能性がある。

このアンケートは、過去4年間、60のリスクを掲載した同一のリストを使って実施してきたが、今回初めて、非常に危険なリスクで我われが見落としているものが他に無いかについて質問を追加した。次回から追加される予定の9つの回答は以下のとおり。

      • 死亡率の低下
      • 中央銀行/通貨リスク(金融システムの完全崩壊)
      • 高リスク投資による利回りの追求
      • クレジット市場のイベント/スプレッド・リスク
      • 保険請求のソーシャル・インフレ
      • 不法行為に関連した改革
      • 生態系サービスでの生物多様性の損失の減少
      • プロジェクト管理
      • 企業および国家に対する制裁リスク(EU/米国)
ICMIFサイトの英語blog記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。
記事日付 2020.2.21

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