今年の3月中旬以降、新型コロナウィルスが世界的なパンデミックとして本当に認識され始めたとき、協同組合/相互扶助の保険組織を代表するグローバルな連合であるICMIFは、このウィルス発生に対する会員団体の対応をモニタリングし事例収集してきました。
ICMIF会員団体は、組合員/会員の保険契約者を支援し、地域社会を支え、それぞれの国の医療提供者に重要なサポートを提供するために、さまざまなチャネルと取り組みを通じて合計10億米ドル(約1,075億円)に近い支援を提供しています。いくつかの事例では金銭的な貢献が行なわれており、その多くは顧客のための保険金請求と全般支援を可能とする保険金支払い面での救済あるいは保障範囲の拡大として位置づけられます。
ICMIFは4月中旬時点で、20か国以上(うち16か国は新興国)の会員団体のパンデミックへの対応内容について50件以上の事例を記録しています。これらの勇気づけられる事例のうち40件以上が、ICMIFのウェブサイトやソーシャルメディアのチャネルで共有されてきました。
ICMIFはまた、197の会員団体向けに隔週でコロナウイルス関連のアップデートを開始し、協同組合/相互扶助の保険組織が世界中でどのような行動を取っているかについての情報を提供することを目指しています。この新たなアップデートの目的は、重要なニーズがある今、世界中の「価値に基づく」保険組織を助け鼓舞するようなトピック情報を提供し、ICMIF会員団体の世界的コミュニティの価値を思い出してもらうことです。
ソーシャルボンド(債券)への投資(3億米ドル)
スウェーデンの会員団体であるフォルクサムとレンスフォーシェクリンガーは、新型コロナウィルスの影響に対抗し医療システムを支援する目的で発行された3本のソーシャルボンドに3億米ドルを投資しました。世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が発行した債券は、新型コロナウィルスのパンデミックの影響を受けた企業に財政支援を提供しています。欧州投資銀行(EIB) のソーシャルボンドは欧州の医療制度を支援し、北欧投資銀行(NIB)は主に北欧諸国における効率的な医療制度の推進と、さまざまなサプライチェーンで起きた混乱を軽減するための財政支援を目的としたプロジェクトに資金を提供しています。
保険の適用範囲とサービス
顧客を支援するために、21以上の会員団体が対象範囲を拡大し、保険金請求手続きを簡単にし、保険料支払い猶予を認めています。また、ロックダウンが行われている国の複数の会員団体では、顧客やコミュニティのためにオンラインの医療相談センターを開設しています。その中には、オンラインの「コール・ザ・ドクター」プラットフォームを立ち上げたサンコール保険グループ(アルゼンチン)、保険契約者向けの仮想医療プラットフォームを立ち上げた サン・クリストバル保険(アルゼンチン)、新たに遠隔医療アドバイス「TeleClinic 」を立ち上げた R+V(ドイツ)などが含まれます。また、CIC保険グループ(ケニア)などでは組合員/会員メンバーに医療品を提供しています。
顧客への利益割り戻し(5億2,500万米ドル)
ICMIFのこれまでの調査によると、保険契約者の運転が減り、保険金請求額が減ったため、5つの会員団体が自動車保険料の割戻しをしています。MAIF(フランス)は、4月の初めにメンバーに自動車保険のリベートを提供していることを私たちのチームが認識した最初の会員団体でした。それ以来、この取り組みが米国の多くの保険会社(ほとんどが相互保険会社)の間で実際に定着するのを見てきました。シェルター保険(米国)とデジャルダン損害保険グループ(カナダ)は割り戻しを約束し、最近では ウニポールグループ(イタリア)も顧客への3億3000万米ドルの割り戻しを約束しました。
寄付金(3,500万米ドル)
13以上の会員団体が、パンデミック対策を支援するために3,500万米ドルを、機材を買うため病院に直接寄付をし、またその他の健康関連の慈善団体に寄付しました。さらに、貧困層やフードバンクにも食料を提供しています。これには、カナダと米国のフードバンクへの10万カナダドルの寄付を発表したカナダのICMIF会員団体ワワネサ保険が含まれます。
医療サービスへの寄付
フィンランドのICMIF会員団体ローカルタピオラ の地域企業のひとつであるローカルタピオラ・セントラル・フィンランドは、コロナウイルス検査分析の開発のために ユバスキュラ大学に20万ユーロを寄付しました。この寄付金はフィンランドのコロナウイルス検査能力を大幅に高めるでしょう。イタリアのウニポールグループは、保険部門の UnipolSai Assicurazioni を通じて、イタリアで最も深刻な影響を受けた地域における新型コロナウィルス緊急事態との戦いを支援するため2,000万ユーロを割り当てました。ウニポールグループは、各州当局、国民保護局および非常事態の管理に関係する当局者と緊密に協力しながら、病院のベッド、特に集中治療ユニット(ICU)およびこれに準ずるユニットの数を増やし、流行拡大防止に必要な医療機器を購入するために、当該資金を配分します。
他の会員団体は、必要な個人用保護具と手指消毒剤を医療施設に直接寄付しました。その中には、新型コロナウイルス患者の看護を行なう人のための個人用保護具を提供するために大学と協力しているリオ・ウルグアイ保険(アルゼンチン)が含まれます。
会員家族とコミュニティのための支援パッケージ(5,000万米ドル)
NFUミューチュアル(英国)は、会員および同社がサービスを提供する農村コミュニティのために4,000万米ドルの支援パッケージを設定しました。
フィリピンの会員団体 CARD MBA、CLIMBS、Rimansi、1CISP はいずれも、パンデミックとその後の景気後退において組合員/会員が支援を必要としている多くの地域で支援パッケージを開始しました。皮肉にもフィリピンの組合員/会員は災害救援に慣れてはいますが、その大半は津波や地震によるものであり、パンデミックによるものではありません。しかし、これらの防災支援システムは、コミュニティに支援を提供する上で非常に貴重であることが証明されています。
インドでは、ダーン・ファンデーション、SEWA、IFFCO、The Goats Trust の各会員団体が、コミュニティのメンバーを支援するパッケージを開始しました。対象者の多くは非公式セクターや農業セクターに属し、伝統的に社会の貧困層であり、パンデミックにおいて最も支援を必要としています。
SANASA Insurance (スリランカ)は、コミュニティの脆弱なセクションが危機を乗り越えることができるよう支援するため、100万米ドルの緊急救済プログラムを実施しており、最も弱い立場に置かれた人々に食料を提供し、各家庭に自給自足を促しています。
ICMIFのショーンターバック事務局長は、次のように述べています。「比較的早い段階におけるこれらの取組の記事は本当に勇気を与えてくれています。そして、損害や今回のような世界規模の悲劇が発生した場合に、協同組合/相互扶助の保険組織がその顧客と組合員/会員にとって頼りとなり、本当に力を発揮すると同時に、サービスを提供するコミュニティを真に支援することができるという事実を強調してくれています。危機が続く中、力づけてくれるようなストーリーがさらに出てくることを期待しております。」
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