2020年の最初の数か月間において新型コロナウィルスにより世界的なインシュアテック投資が減速した後、第2四半期には15億6,000万米ドル(1,653億円)がインシュアテック企業によって調達されました。ウイリス・タワーズワトソン(Willis Towers Watson)による最新の四半期インシュアテック・ブリーフィングによれば、総額は第1四半期比で71%増となりましたが、その一部は、1億米ドル(106億円)超の「メガラウンド」4件を含むレイター・ステージの投資によるものです。
取引件数は74件と第1四半期から23%減少しましたが、投資家がより成熟したベンチャー企業への支援を好みシードとエンジェルの案件を避け続けたため、個々のラウンドの多くは規模がより大きなものとなりました。損害保険セクターへの投資が資金調達の68%と圧倒的でしたが、生保/健保セクターへの投資のシェアは17ポイント増加して32%になりました。これは、パンデミック危機により、同セグメントにおけるテクノロジーの価値、特に遠隔医療の価値が高まり続けているためです。また、「Lemonade」社の新規株式公開(IPO)や、インシュアテック企業「Hippo」および「Buckle」による既存の保険会社2社の買収も注目に値します。
新たに登場した台湾、クロアチア、ハンガリーなどを含め、過去最高の25か国で案件が成立しました。シードとシリーズAの資金調達は、取引案件のわずか42%で過去最低を記録しました。シリーズAの案件は横ばいでしたが、シリーズCの案件は11%を占め、前四半期の6%から増加しました。販売に重点を置くスタートアップ企業では取引シェアが11ポイント上昇しましたが、B2B企業ではシェアが9ポイント減少しました。(再)保険会社の新規のパートナーシップは、2020年第1四半期から4件増加し、過去最高の34件に達しました。
ICMIFの協賛会員であるウィリス リー(Willis Re)でインシュアテックのグローバル責任者を務めるアンドリュー・ジョンストン博士(Dr Andrew Johnston)は次のように語りました。「インシュアテックへの投資は第2四半期に明らかに反発し、レイター・ステージの資金調達へのより大きなコミットメントに向けた流れが続いていますが、私たちはこの四半期だけに基づいて世界のインシュアテック市場全体の状況を判断しすぎないように慎重であるべきです。短期的には、特に高レバレッジのインシュアテックについて、投資家の信頼が現状を試すでしょう。同様に、特定のリスクとそれに関連するベクトルも根本的に変化したため、その影響はまだ実感できていません。結果的に、インシュアテック活動の全体的な鈍化を観察する可能性は十分にあります。」
「中期的には、消費者の楽観的な見方の高まりとともに、リスククラスの変化をよりよく理解することができるかもしれませんが、新型コロナウィルスの真の経済的影響は、おそらく2021年から2022年頃まで明らかにならないでしょう。これは、多くの(再)保険会社によるテクノロジーへの投資や展開の意欲に、間違いなく影響を与えるでしょう。特にロックダウン後の潜在的な社会的変化により、そのユースケースが完全に失われてしまった場合、一部のインシュアテック企業にとって生き残りが課題となるかもしれません。同様に、そのような変化は他の人びとに機会を生み出します。シードとレイター・ステージの間の資金調達ギャップが拡大し続ければ、多くのインシュアテック企業は成長に必要な資金の獲得に苦労するでしょう。」
財物リスク関連のインシュアテックに焦点を当てたこの最新のブリーフィングは、同セグメントの詳細な探究から始まります。このブリーフィングには、ホームオーナーや家主向けの商品を引き受ける管理総代理店の「Openly」、財物保険請求のデジタルプラットフォーム「handdii」、財物保険会社のため構造化されたデータ観測と予測を提供する「Arturo」、被保険者に住宅保険契約を提供する「Hometree」、高解像度のエクスポージャーデータをリアルタイムで提供する「Insurdata」など、財物に特化したインシュアテック企業の事例が含まれています。
このブリーフィングはまた、ウイリス・タワーズワトソンと「e2Value」によって開発され、再取得原価の決定に使用されるデータを収集する「構造保険スコア(Structure Insurance Score)」や、企業価値を6億2,300万米ドル(660億円)とした、タイトル保険およびエスクローサービスの「States Title」による1億2,300万米ドル(130億円)の資金調達、そしてユニコーン・インシュアテック企業でありホームオーナー保険会社の「Hippo」による「Spinnaker Insurance Company」の買収(これにより同社は全米50州でのライセンスを取得した)についても検証しています。
このブリーフィングには、インシュアテック企業への投資家であり「American Family Ventures」のプリンシパルのカイル・ビーティ(Kyle Beatty)氏との対談や、ホームオーナー保険および特に洪水リスクに焦点を当てたB2Cのインシュアテック企業である「TypTap」の創設者との対談も含まれます。この号にはまた、財物カタストロフ保険のテクノロジーについての、ウィリス リー・ノースアメリカで副社長兼カタストロフィR&D責任者を務めるデズモンド・キャロル(Desmond Carroll)氏による記事も掲載されています。
「カタストロフィー・リスク・モデリングの主要なテクノロジーは、モデルのアウトプットの利用が大幅に拡大されているにもかかわらず、プロセスの面で科学が始まって以来ほとんど進化してきませんでした。それは変わろうとしています。機械学習とビッグデータの組み合わせは、たとえば、衛星データの大量分析を通じて壊滅的な気象イベントをよりよく理解するなど、伝統的なカタストロフィー・リスクのモデリング方法を根底から覆す真の可能性を秘めています。それは、インシュアテックが最終的に財物保険部門のリスク移転に革命を起こす1つの方法にすぎません」とキャロル氏は述べました。
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