デンマークの金融ニュースウェブサイト「POV – POINT of VIEW International」に掲載された以下の記事において、デンマークのICMIF会員組織 LB 保険グループ(LB Forsikring)の最高経営責任者であるアンネ・メッテ・トフテゴー(Anne Mette Toftegaard)氏は、自らの組織における多様性を論じ、多様性を阻害要因と見なすのではなく大いなるチャンスと見なすべきと提案しています。LB保険グループでは、マネージャーの半数以上(58%)が女性です。ICMIF会員がここで記事を読めるように複製の許可を出していただいたトフテゴー氏に感謝申しあげます。
In the article below, written for a Danish financial news website POV – POINT of VIEW International, Anne Mette Toftegaard, CEO of ICMIF member LB Forsikring (Denmark), discusses diversity at her organisation and suggests that instead of seeing diversity as a hindrance, it should be seen as a huge opportunity. At LB Forsikring over half (58%) of the managers are women. We would like to thank Anne Mette for her permission to reproduce her article for ICMIF members to read here.
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ボトムアップから多様性は生まれません。それは、経営陣の意思決定から始まります。あるいは、おそらく経営陣が多様性の事例を推進することから始まります。いったん多様性が現実のものになると、大きな成果を生み出しますので、同じ方向性を続けることが当然のこととなります。
近年、経営プロセスの中でいかにして多様性を高めている(高めてきた)かおよびその方法について、数多くの文献や記事が発表されています。
しかしこの投稿は、自慢でも経営プロセスの多様性を高める5段階のガイドでもなく、むしろ、あらゆる研究、調査プロジェクト、実務経験がリーダーシップの多様性に非常に大きな価値があると示しているのに、なぜ多様性を高めることの価値について未だに議論を続けているのかを静かに振り返るものです。
しかし、私は次の告白から始めましょう。
LB保険グループの今年の年次報告書が出た時、私は多様性のことを考えませんでした。私たちは新型コロナウイルスの危機の真っ只中にあって、770名の全職員が在宅勤務していたため、報告すべき問題はほかにもたくさんありました。
しかし、多様性は年次報告書で私たちが報告する指標のひとつであり、「LB保険グループのマネージャーの半数以上(実際には58%)が女性です」と記載されています。
それは金融業界では標準的ではありません。デンマークの金融業界における女性管理職の最新調査は2018年からで、女性管理職の割合は26%でした。デンマークの保険業界における現在の女性従業員比率は平均47%です。
当然のことながら、私たちの数字が優れていることを誇りに思っていますし、このことは私もインタビューやソーシャルメディアで非常にはっきりと言ってきました。
しかし、正直に言うと、私たちが普通だと思っているものが実際には私たちのセクターに固有のものであると数人の同僚が私に気付かせてくれるまで、その数字に注目したことは一度もありませんでした。
あるいは別の言い方をすれば、私たちはジェンダーの多様性に特に目を向けてきませんでした。それにもかかわらず、目的をもって多様性の拡大に取り組んできた組織よりも私たちは良い数字です。私たちは、現在に至るまで、目標を設定したり、割当プログラムを設定したり、特別な女性のネットワークを作ったりしていません。
これはどういうことなのでしょうか?
私はそのことについて考えました。私の答えは、私たちが良い文化を持っているということです。
「われわれには良い文化がある」と言うと非常に立派に聞こえるかもしれません。会社の従業員の多様性を高めるには、書かれた目標や特別な措置が必要になるかもしれないことを決して過小評価してはなりませんが、しかし、正しい文化がなければ、多様性を長く維持することはできないという事実は変わりません。
すでに多様性と地域社会に重点が置かれている私たちの組織でダイレクターの責任を果たすことを非常に光栄に思っていますが、同時にその文化を維持し拡大していくことも私の責務であると考えています。
ボトムアップから多様性は生まれません。それは、経営上の意思決定から始まります。あるいは、おそらく多様性のためのマネジメント事例から始まります。
そして、いったん多様性が現実になれば、多様性はすばらしい結果を生み出しますので、同じ道を歩み続けるのは当然のことです。それを望まない人がいるでしょうか!
そして、私がそうであるように、あなたがチームのリーダーシップを支持するのであるならば、それは不可避です。
なぜ優れた才能を逃すのか?才能とは何か?
LB保険グループでは、保険部門の職員の 仕事に対する満足度は最高で、幸せな職員は良好な職場環境をもたらしています。
当社の文化や価値観が働きがいを高めるのに役立っていることは間違いありません。これは、すべての職員調査で実証されています。私たちのビジネスモデルは、私たちが行うすべての中心に会員を置くことであり、会員にお金を還元することに非常に重点を置いています。
個人だけでなく地域社会全体がうまくいく必要があるという事実によって私たちの企業文化が特徴付けられていることが私にとって大事なことです。このような職場環境は、多様性を引きつけ、またその余地を広げ、最終的にはより良い事業につながります。
ですから、なぜ多様性や良き文化を持つことがいまだに「自慢」できることなのか、私には理解できません。なぜそれが当たり前ではないのでしょうか?
一部の人にとって多様性と地域社会への注目が中核ビジネスに関係ないものであることを私は知っています。しかし、私はそれに同意しません。
ビジネスリーダーとしての私たちの仕事は、顧客、株主、ステークホルダーのために、可能な限り大きな収益という形で最大限の価値を生み出すことです。ここでは、収益が株主または顧客に帰属するかどうかに関係なく、私たちは同じ条件で競争します。
一方、相互扶助組織は異なった方法で課題を解決します。しかし、さらに多様性があれば、最善の方法でこの課題を解決できる良い条件を持つことができると、私は経験上確信しています。
雇用主として、私たちは常に応募者や職員同士を試験し比較することに慣れています。私たちはMBTIシステム、DISCプロファイルに従って「人々を駆り立てる指導者」・「分析家」・「チームプレーヤー」などの区分に基づきチーム編成します。
そして、私たちはすでに応募者を評価し、多くの異なるパラメータに基づいてチームを編成するのに慣れており、これには、たとえば社会的および感情的な知性を含む他の形の知性も含まれるはずです。
才能にはいろいろなものがあるからです。そして、それはCEOにも当てはまります。なぜなら、優れた最高経営責任者が数年前に「実行した」ことは、今日ではあまり重要ではない一方、現在においては、うまく意思疎通ができず、私たちの周囲の世界に対する倫理的・道徳的な理解が十分でない場合には、そのCEOは何も制御できなくなるからです。
多様性と文化に重点を置かないと、才能と発展の機会の両方を失うことになります。
そうです。いままで行なってきたことを継続し、従来どおりに人を雇い昇進させるだけでは十分ではありません。多様性と文化に重点を置かないと、才能と発展の機会の両方を失うことになります。
ここでは、ジェンダーの多様性を高めることだけでなく、より広く多様性について考えることについてお話しします。もはや同じ場所で40年間働いたり、62歳で退職したりするような世界ではなくなっています。
また、雇用主としての私たちに対する要求がワークライフバランスに関連して増大するのにともない、グローバル化の進展には新たなスキルを必要とします。また、仕事の内容も有意義である必要があり、人びとはパートタイムやフレックスで、あるいはフリーランスとして働けなくてはなりません。
同時に当グループは、周辺の地域社会を反映し、企業文化がさまざまな側面で多様性を包含するようにしなければなりません。
それを阻害要因と見なすのではなく、極めて大きな機会と考えるべきです。社会の多様性を反映した人材を求める企業とのマッチングを図るための最適な機会を私たちに与えてくれます。
それはリーダーシップから始まる
会社の将来を確かなものにしたいのであれば、望ましい文化を創造することに尽力する経営陣が必要です。
LB保険グループにおける管理職の最も重要な任務の一つは、職員の潜在能力を解き放ち、個々の職員が成長できる空間を創り出すことです。
これには、性別や年齢などの外的なものを見る前に、コンピテンシーを確認し、幅広い理解ができる経営チームが必要です。そして、すでに多様性の高い組織のいたるところにリーダーシップ・チームが存在していれば、これを行うのは明らかに簡単です。
信頼が同時に価値であるような経営文化を作ることができれば、成功につながるものと思います。
あなたが、職員が最善を尽くすことを信頼し、必要があれば他の人が助けてくれると信じ、職員が自分は助けてもらえると信頼していれば、職員がより多くの責任と成長のために手を差し伸べる勇気のある文化が形成されます。たとえば、適切な年齢ではなく、あるいはすでにリーダーの職に就いている人たちとは異なっていたとしても、その職員があえてリーダーになろうとする場合です。
私にとって、これは健全な事業を特徴づけるものです。年次報告書の数字だけでなく、地域社会、信頼、多様性の余地といった文化を持つ会社は、共に素晴らしい結果を生み出すことができます。