ニュージーランドのジェームズ・ショー(James Shaw)気候変動問題担当大臣は今月初め、同国が世界に先駆けて金融業界に気候リスクについての報告を求めることを発表しました。
発表では、この政策変更は気候危機への対応でニュージーランド政府が達成してきた大きな進歩に基くものであると述べられています。
ジェームズ・ショー大臣は、次のように述べました。「本日、低炭素なニュージーランドの未来と、これからの世代のためのよりクリーンで安全な地球に向けて、我が政府は新たな旅の一歩を踏み出しました。」
「ニュージーランドの大企業の多くは現在、気候変動が彼らの活動にどのように影響するかについて十分に理解していません。」
「私が本日発表している政策変更により、財務と事業上の意思決定の中心に気候リスクと回復力が置かれることとなります。それは、気候リスクの開示を明確に、包括的に、そして主流とすることを確実にしてくれます」
新制度は、国際的なベストプラクティスとして広く認知されている気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みを踏まえ、「遵守せよ、さもなくば説明せよ(comply or explain)」を基本としています。
対象となる事業者は、ガバナンスの取決め、リスク管理、気候変動の影響を緩和するための戦略などについて、毎年開示しなければなりません。事業者は、開示ができない場合にはその理由を説明しなければなりません。
合計で約200団体が、抱えている気候リスクを開示することが義務づけられます。
ショー大臣は、「何が測定され管理されるか、そして気候変動が将来どのように影響を与えるかを企業が知っていれば、企業は変わりそして低炭素戦略を採用することができます。新型コロナウィルスは、私たちがシステミックな経済ショックに備えて計画し管理することがいかに重要であるかを浮き彫りにしました。そして気候変動ほど大きなリスクはありません」と述べました。
ニュージーランドは、義務的な気候関連の財務情報開示制度を導入する最初の国となります。
ショー大臣は、「オーストラリア、カナダ、英国、フランス、日本、欧州連合はいずれも、企業に対し何らかの形で気候リスクの報告をさせるべく取り組んでいますが、気候リスクに関する開示を金融システム全体に義務付けることでニュージーランドはその先を進んでいます」と述べました。
この発表によれば、ニュージーランド政府は過去3年間にわたり世界で最も意欲的な部類に入る気候目標を設定し、ニュージーランドの排出量の曲線を押し下げる目的で政策と制度の変更を行いました。
詳細な情報
気候変動に関する新たな報告要件は以下に適用されます。
-
-
- 登録されているすべての銀行、信用組合、および総資産が10億NZドル(690億円)以上の住宅金融組合
- 運用資産総額10億NZドル(690億円)超の登録投資スキームに関するすべてのマネージャー
- 運用資産総額10億NZドル(690億円)超または年間保険料収入2億5千万NZドル(5億円)超のすべての認可保険会社
- ニュージーランド証券取引所に上場されているすべての株式および債券の発行体
- ニュージーランド事故補償制度(ACC)やニュージーランド年金基金(NZ Super Fund)など、運用資産総額が10億NZドル(690億円)超の国営金融機関
-
また、海外の法人組織も、ニュージーランドにおける年次報告書中での開示が義務づけられています。
10億NZドルの基準値により、ニュージーランドの運用資産の約90%が開示制度に含まれることになります。
ニュージーランド外部報告審議会(XRB)は、いくつかの報告基準を策定しており、企業はそれらを遵守するか、遵守しなければその理由を説明します。
金融市場庁(Financial Markets Authority)は、独立した監視、報告、執行を担当します。
議会で承認されれば、金融機関は早ければ2023年に開示を求められる可能性があります。
責任ある持続可能な投資に関心のあるICMIF会員は、2020年9月21日(月)から9月23日(水)にかけて実施された「持続可能な投資リーダー」ウェビナーシリーズの録画を視聴できます。
この一連のウェビナーは、協同組合/相互扶助セクターや業界の他のリーダーからベストプラクティスを聞く機会を提供し、ICMIF会員の持続可能性への関与を高め、責任ある投資や持続可能な資金調達のあらゆる側面においてリーダーシップを前進させるのに役立っています。これらのウェビナーは、特にICMIF会員における投資、財務、持続可能性についての専門家を対象としていますが、これらのテーマに関心を持つICMIF会員組織のすべての職員に適しています。
※ 文中の金額は1ニュージーランド(NZ)ドル=69円で換算