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レポート

2020年「クライメートワイズ・プリンシプルズ・インデペンデントレビュー」(ClimateWise Principles Independent Review)のスコアがクライメートワイズ会員全体で記録的に向上

 

2020年「クライメートワイズ・プリンシプルズ・インデペンデントレビュー」(ClimateWise Principles Independent Review 2020)が先週発行されました。その調査結果は、会員である保険業界の企業が気候変動への準備と対応の開示において大きな進歩を遂げたことを示しています。 ICMIF会員組織であるイギリスのエクリージアスティカルEcclesiastical)とスイス・リーSwiss Re)はいずれもクライメートワイズ(ClimateWise)のメンバーです。

クライメートワイズは、気候変動がもたらす機会と課題に対応するために、再保険会社、保険会社、ブローカー、業界のサービスプロバイダーを結集する自主的でグローバルな会員制の取り組みです。この取り組みは、サステナブル・ファイナンス・センター(CSF)内の、ケンブリッジ大学サステナビリティ・リーダーシップ研究所(CISL)に置かれた事務局を通じてコーディネートされています。

このレビューでは、クライメートワイズ・グループに加盟する組織の平均スコアが、2019年の55%から2020年には65%に大幅に増加したことが報告されています。2020年のグループスコアの増加は主に会員組織による、投資および引受戦略への気候変動にかかる考慮事項の組み込みにおける大きな進歩、気候ストレステストへのメンバーの参加率の高さ、および既存のリスク管理フレームワークへの気候リスクの統合における改善により推進されました。

クライメートワイズによれば、改善の余地は残っており、引き続き業界全体で緊急の行動が必要となります。会員にとっての今年の主な焦点は、気候変動に対する戦略的回復力の調査を進め透明性を高めることです。これは特に、シナリオ分析の採用を拡大・深化させ、結果と回復力への影響、およびそれによる意思決定への影響を示すことを通じて行なわれます。

レビューの序文においてチャールズ英国皇太子は、保険業界は物理的および移行リスクの理解通じて、大規模な資産の保有者として、革新的な引受を通して、そして世界の顧客との関わりを通して、果たすべき重要な役割を持っているという、自身の長年の信念を改めて確認しています。

チャールズ皇太子は、気候リスクの理解が深まるにつれて、保険業界は新たな制限および保障範囲を通じてそれらのリスクに対する独自の回復力を高めようと努力するだろうという彼の信念を述べています。皇太子は、重要と考えられる3つの問題を指摘します。

第一に、クライメートワイズ・グループの使命と作業の流れの重要な部分は、気候変動に対処する商品を革新するということです。

第二に、保険セクターは、構築された自然災害に対する回復力の範囲内で、より良い工法を推し進める必要があります。

第三に、災害等発生後における適切に組織化された迅速な対応が緊急に必要です。

チャールズ皇太子は2007年にクライメートワイズ・プリンシプルズ(ClimateWise Principles)を立ち上げましたが、その14年後の現在、業界全体で取られた措置を反映して、過去1年間のクライメートワイズ・プリンシプルズの平均スコアが大幅アップしたことを喜ばしく思うと述べています。しかし皇太子は同時に進歩が遅すぎることを恐れており、迅速化する必要があると考えています。

さらに皇太子は、保険業界が資産サイドからネットゼロへの移行に関与していることを踏まえて、保険会社が行動を起こして経済全般における彼らの顧客とともに変化を推進できるように、保険の引受サイドでも意欲的にネットゼロに移行することを望んでいます。

このレポートに掲載されているICMIF会員組織の一つが、イギリスに拠点を置く相互保扶助険会社であるエクリージアスティカル(Ecclesiastical)です。サブ原則2.3において、会員がリスク管理の知識とモデリングのノウハウを連携して共有することを奨励しています。エクリージアスティカルは独自の英国寒波被害モデルを開発しており、それをさらに開発するために再保険会社と共有していると触れられています。

エクリージアスティカルは、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの「持続可能な遺産」の修士課程を10年以上にわたり支援してきました。この支援は、主要な遺産保存スキルを確実に維持するというエクリージアスティカルの取り組みを示しています。

レビューで取り上げられている他のICMIF会員は、協賛会員のスイス・リー(Swiss Re)です。スイス・リーの持続可能性戦略の重要な柱は、気候変動を緩和または適応するための新商品を開発することです。スイス・リーは、低炭素への移行機会のための保険・再保険ソリューションの主導的なプロバイダーになることを目指しています。同社は、あらゆる種類の再生可能エネルギーの保険・再保険に対し、洋上風力ソリューションに関する特定の専門知識を提供します。

このレビューでは、スイス・リー独自の従業員エンゲージメント・プログラムであるCOyou2についても言及があります。このプログラムは、気候に配慮したさまざまな投資に対して従業員に補助を行なうものです。

スイス・リーは、国連グローバルコンパクト(UN Global Compact)の「1.5°へのビジネス・アンビション(Business Ambition for 1.5°C)」の署名者や「国連ネットゼロ資産保有者アライアンス(UN Net-Zero Asset Owner Alliance)」の創設メンバーとなるなど、気候関連の問題への積極的な関与を示したことでも称賛されています。

クライメートワイズ・プリンシプルズは、2007年以来、保険業界が気候関連のリスクと機会を開示するためのフレームワークを提供しています。すべてのクライメートワイズ会員は、このフレームワークに沿って毎年報告を行なっています。報告は個別にレビューとスコア付けが行なわれ、まとめられて匿名化されクライメートワイズ・プリンシプルズ・インデペンデントレビューが作成されます。

2019年の気候関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)の推奨に沿うこのレビューは、TCFDに準拠した報告の2年目を迎えます。クライメートワイズによると、結果は有望なものであり、会員は今後のTCFDレポートの義務化に十分に備えることができるでしょう。

 

ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。

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