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活動の記録

ニュージーランドの会員組織に訪問団を派遣、FMGの取り組みに学ぶ

国際協同組合保険連合アジア・オセアニア協会(AOA)では、会員間の相互交流を通じて優良事例を学ぶことを目的とする訪問団を結成し、2015年12月8日からの3日間、ニュージーランドの会員である農業者相互保険グループ(FMG)を訪問して事業活動を視察、意見交換を行いました。

地震リスクと農業リスクをテーマに優良事例を学ぶ

今回初めての開催となる訪問団には、日本とフィリピンから計3団体、9名が参加しました。12月9日は、首都ウエリントンのFMG本部を訪問し、事業戦略や農業リスクへの対応等について講義を受けました。

クリス・ブラックCEOは、「相互交流が深まれば国を超えた連帯がより強くなり、それが地域や世界の協同組合保険組織の発展にも繋がる」と歓迎の辞を述べました。

農村地域で市場占有率№1を誇るFMG

農村地域戦略部長のマイク・ラング氏は、「ニュージーランド損害保険市場におけるFMGの占有率は約4%であるが、農村地域に限定すると占有率は42.3%で、かつ安定的に成長している。これは、1905年の創業以来、一貫して農業者のための相互扶助組織として事業を運営してきた成果だ」と、創業時からの理念である「ニュージーランドの農村地域により良い保障を提供する」を忠実に実践することの大切さを強調しました。

事業戦略と新たな経営方針

営業推進・情報デジタル部長のグレン・クロースデル氏は、「FMGの事業戦略で最も重要なものは『顧客との結びつき』であり、新経営戦略では『リスクを取らなければ成長はない』という考えのもと、リスクを分析・管理してアドバイスすることで農業者の事故を未然防止するとともに、信頼関係がより強固になっている」と、自信をのぞかせました。

リスクアドバイスの事例

リスクアドバイスの事例として、まず住宅・建物の火災予防に関する説明がありました。これは赤外線画像イメージを利用して、住宅・建物で高熱になっており火災の危険性がある箇所の有無を点検するもので、FMGの顧客は無料で点検サービスを受けられるそうです。

また、農村地域のハイリスクの事例として「トラクターの出火」が紹介されました。これは春に頻発する事故で、野鳥がエンジンルームに巣を作っているのに気づかずトラクターを始動して巣が発火し、最悪の場合トラクターが焼失するというものです。

FMGでは“Stop and Pop” (トラクターを止めてエンジンフードを開けよう)というキャンペーンを展開しました。このキャンペーンでは「運転前にフードを開けて、鳥の巣がないか確認しよう」、「手元に消火器を用意しよう」等を、ネット上に開設した鳥撃ちゲームや郵便、広告チャンネルなど幅広いメディアを通じて訴え、結果、この5年間でトラクターの出火による保険金請求件数・金額は半減したそうです。

ブランド戦略

クロースデル氏は、「我々は顧客とパートナーであり、顧客のリスクを軽減することが大事であると考えている。また、顧客にFMGがリスクアドバイスのエキスパートであると認めていただくことも大切であると考えている」と述べました。

FMGのブランディング・スローガン“We’re here for the good of the country”(私達はカントリーのためにある)の「カントリー」とは、ニュージーランドという国とそれを支える農村地域の両方を示しており、国全体、農村地域、農業者一人ひとりに向けたメッセージとのことで、「農業者のために事業を成長させる」という強い意志が伝わって来ました。

地震リスクへの対応

12月10日は、ニュージーランドの農業教育機関で最も歴史のあるタラタヒ農業研修センターを訪問、酪農作業の実情を視察した後に、さらにパーマストン・ノースのFMGオフィスを訪問しました。

損害査定部長のショーン・ベッティ氏からは、2011年2月にニュージーランド3位の都市クライストチャーチで大地震が発生した際の対応事例について説明を受けました。

ニュージーランドの地震保険制度では、まず公的地震保障制度である「地震委員会(EQC)」が運営する地震保険から保険金が支払われます。支払上限額は、住宅建物の場合10万NZドルです。

さらに、10万NZドルを超過する部分の保険金については、民間保険会社が運営する火災保険の地震特約から支払われますが、クライストチャーチ大地震では、EQCと民間保険会社で損害査定額が異なった結果、両者の協議が長引き保険金支払が滞る場合が多かった等、現行制度の課題も含めた説明がありました。

コールセンターの現場を視察

訪問団は、FMGパーマストン・ノース・オフィス内に設置されているコールセンターも視察しました。

ここでは「電話が鳴ってから遅くとも10秒以内には受話器を取る」という目標を掲げており、ほぼ達成できているとのことでした。また、問合せを受け、必要があれば24時間以内に顧客訪問することや、照会内容がデータベースに登録・管理され、営業職員と共有できるシステムが構築されていること等、きめ細かな対応には目を見張るものがありました。

課題解決への糸口に繋がる訪問団

第1回の訪問団は、FMGの事業戦略・経営方針や具体的な優良事例を学ぶ、非常に有意義なものでした。
参加者からは、「このような活動を重ねることで視野が広がり、課題解決へのヒントをより多く持つことができる」「同業他社の事業をさまざまな方向から見ることができ非常に勉強になった」などの声がありました。

貴重な時間を割いて訪問団に対応していただいた全ての方にこの場をお借りして心からお礼申しあげます。

クリス・ブラックCEO、FMG
クリス・ブラックCEO、FMG
ニュージーランド保険業界の概要について学ぶ
ニュージーランド保険業界の概要について学ぶ
会員訪問団とFMGの皆さん
会員訪問団とFMGの皆さん