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レポート

スイス再保険のSONARレポートは、COVID-19後の新たなリスクを検証しています

Bangkok City, Thailand : 03/12/2020 : Unidentified people, Crowd of Thai wearing face mask for health due to Coronavirus Disease or covid-19 and air pollution in mass transit in public. Rush hour.

COVID-19危機が世界中の何百万もの人々の生活に決定的な影響を与え続けている中、スイス再保険のレポート「SONAR 2021New Emerging Risks Insightsは、COVID-19後のリスク状況を形成すると考えられる脅威を明らかにしています。これらの新たなリスクは、政府の介入による意図しない結果から整備されていない産業活動を再開する危険性にまで多岐にわたります。また、レポートでは特に都市交通の分野において脱炭素化が急務であることを強調しています。

スイス再保険のグループ最高リスク責任者であるパトリック・ラーフラウブ( Patrick Raaflaub )氏は次のように述べています。「COVID-19が2019年末に発生したとき、その影響の大きさを予測できた人はほとんどいませんでした。パンデミックを緩和するためにとられた行動の多くは、不平等の格差の拡大や整備されていない産業活動を再開することの危険性まで、それ自体が新たなリスクを生み出しました。再保険会社としては、これらの新たなリスクを可能な限り理解することが重要です。また、すでに知られている新たなリスク、特に気候変動に関しては今後数年間にわたって私たちに影響を与えることに注意を払うことが重要です。」

所得の不平等と富める者と貧しい者の間のギャップの拡大

COVID-19によるロックダウンは、貧富の差を広げたとレポートは述べています。多くのホワイトカラー労働者はホームオフィスに移動して仕事を続けることができましたが、小売業、飲食業、観光業などの低賃金の対面式サービス部門は高い失業率を記録しました。たとえば、アメリカでは、レジャー・ホスピタリティ分野の失業率は、2020年の初頭の5%から20204月には40%に上昇しました。イギリスでは、これらのセクターの失業率が20211月までの3か月で10.9%とピークに達しました。イギリスの失業率のピーク水準がアメリカよりも大幅に低い水準に収まったのは、イギリス政府の雇用維持制度(UK government’s job retention scheme)によるものでした。

レポートの著者は、所得格差の問題は先進国だけの問題ではないとしています。Pew社の調査によると、世界の中所得層の成長は2020年に予測されたよりも5,400万人少なく、その減少の60%はインドだけで記録されていました。政府の財政支援策がとられた国では、低所得層の家計支援がうまくいきました。アメリカでは、パンデミックの最初の数か月間、景気刺激策により低賃金労働者の収入が増加しました。(注1参照)

特に懸念されるのは、圧迫された労働市場やキャリアの機会の欠如に苦しんでいる若い世代への影響です。米国では25歳未満の失業率が10%と高いままですが、英国ではこの数字が12に達しています(注2参照)

レポートによると、世界の多くの人々の収入の減少は、多くの市場で見られる最近の保険需要の成長を脅かしています。また、中・低所得層の保護格差を埋めるための手頃な民間保険商品の開発が重要であるとしています。

ゾンビ企業:政府の刺激策を撤回することのジレンマ

COVID-19が世界中を席巻したとき、多くの政府が企業の倒産を防ぐための財政支援プログラムを制定した、とスイス再保険は述べています。アメリカでは企業倒産件数が2020年に前年比で5%減少し、2017年から2019年にかけての増加傾向が減少に転じました。政府の景気刺激策により多くの企業が存続していますが、刺激策は実行不可能な企業、いわゆる「ゾンビ企業」も支えています。

ゾンビ企業は金融セクターにとって潜在的な負担となっており、特にクレジット・デフォルト率の上昇が懸念されます。低金利のおかげで企業は銀行からの融資を受けるようになっていますが、政府の支援が途絶えてゾンビ企業が債務超過に陥るとこれらの融資が大規模な債務不履行リスクを生み出します。国際金融研究所(Institute of International Finance)の報告によると 、アメリカの中小企業に対する銀行融資は2020年に6%増加しています。(注3参照)

破産や倒産の潜在的な急増を回避するためには、政府は刺激策をいつ、どのように撤回するかを慎重に決定する必要があります。スイス再保険研究所が最近発表した論文では、持続可能な経済回復のためには、政策は長期的に存続可能な企業をサポートし、存続不可能な企業の秩序あるリストラを促進するべきであると結論付けています。(注4参照)

輸送を脱炭素化するための都市移動の新しい手段

地球温暖化や気候変動の最も深刻な影響を回避するには、グローバルバリューチェーンの迅速な脱炭素化が不可欠です。脱炭素化の重要なターゲット領域の1つは輸送で、現在、燃料の燃焼による世界のCO2排出量の約24%を占めています。

電気自動車、水素燃料電池、および非化石代替燃料への移行は順調に進んでおり、交通量の多い都市中心部への持続可能な対応が期待されています。たとえば多くの都市では、レンタル可能な電動スクーター(e-scooters)などの洗練されたマイクロモビリティシステムがすでに導入されています。将来的には、自動運転の配達車両やクリーン動力を利用した空を飛ぶタクシーなどの都市の空中移動の開発も視野に入れています。

クリーンな輸送における革命の利点は明らかです。しかし、新たなリスクもあります。都市計画担当者は、新しい電気車両(e-vehicles )が従来の交通機関やインフラストラクチャと安全に共存する方法を作るという課題に直面しています。電動スクーターや電動自転車による怪我は、新たな保険金請求の原因になる可能性があります。さらに、これらの新しい形態の都市交通の多くのレンタルモデルでは、個人情報の共有が必要であり、データ盗難の可能性があるというリスクが発生します。したがって、これらのリスクを軽減するためには、法律や規制も更新する必要があります。

製品テストおよびその他の技術リスクにおける多様性のギャップ

スイス再保険のSONARレポートでは、COVID-19関連の新たなリスクに加えてグローバル市場における新たな技術的リスクも調査しました。例えば、製品テストにおいて性別や年齢などを考慮することの重要性を検証しました。自動車と医療の安全性を高めるためには、衝突試験用ダミー人形や医療試験は人口動態の変化をより正確に反映する必要があることを示唆しています。

さらに、今年のSONARレポートでは、COVID-19の長期的な健康への負担、パンデミック時の監視不足やメンテナンスが不十分な産業設備の再稼働リスク、デジタルナッジの倫理性などをテーマにしています。

SONAR2021レポートはこちらをクリックしてください

注1:https://www.pewresearch.org/global/2021/03/18/the-pandemic-stalls-growth-in-the-global-middle-class-pushes-poverty-up-sharply/

https://www.pewresearch.org/fact-tank/2021/03/18/in-the-pandemic-indias-middle-class-shrinks-and-poverty-spreads-while-china-sees-smaller-changes/

注2.:https://www.bls.gov/web/empsit/cpseea10.htm

https://www.ons.gov.uk/employmentandlabourmarket/peopleinwork/employmentandemployeetypes/datasets/summaryoflabourmarketstatistics

注3:https://www.iif.com/Portals/0/Files/content/1_201001%20Weekly%20Insight_vf.pdf

注4:https://www.swissre.com/dam/jcr:cd263e76-34a6-4cd5-adf7-4613abb3dc98/EI-9-2021-post-covid-19-recovery-insolvencies.pdf

 

ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。

https://www.icmif.org/news_story/swiss-res-sonar-examines-the-emerging-risks-set-to-shape-a-post-covid-19-world/

掲載日付2021.6.10