インシュアテック(InsurTech)セクターへの世界的な連結投資は、過去最高を更新し続けています。保険技術を持つ新興企業へ投資された資本は、過去1年間で初めて100億米ドル(1兆1,541億円)を超えました。2021年は第1~3四半期で記録的な105億米ドル(1兆2,118億500万円)となりました。2021年はまだ3か月残っていますが、2018年と2019年に世界でインシュアテックに投資された金額の合計額を1200万米ドル(13億8,492万円)下回っているに過ぎません。ウィリス・タワーズ・ワトソンの最近の四半期インシュアテック・ブリーフィング(Quarterly InsurTech Briefing)によると、総案件数は421件あり、これも年間記録となっています。
最新の四半期では、113件の取引で31億米ドル(3,577億7,100万円)を超える投資が行われ、2020年第3四半期と比較して23%増加となりました。これは、過去2番目に大きな資金調達の四半期でした。案件数は前年比で9%の増加にとどまりましたが、1億米ドル(115億4,100万円)以上のメガラウンド数は11件に達し、総資金調達の半分以上を占めました(ほぼすべての記録を更新した2021年第2四半期の70%近くからは減少)。3件の最大の取引のうちの2件は、サイバー関連のインシュアテックとの取引で、Coalition(2億500万米ドル,236億5,905万円)とAt-Bay(1億8,500万米ドル,213億5,085万円)でした。
米国に籍を置く投資対象の割合は前四半期から約7ポイント上昇し、46%近くに回復しました。一方、インドネシア、スウェーデン、南アフリカ、シンガポール、アラブ首長国連邦などの国では、四半期に比べて案件数が増加しました。 初期段階の新興企業は、記録的な6億3,000万米ドル(727億830万円)を調達し、平均取引規模は約1,200万米ドル(13億8,492万円)に拡大しました。シードラウンドとエンジェルラウンドのシェアは劇的に低下して、わずか19%にとどまり、2020年第2四半期以来の最も低いポイントとなりました。逆に、シリーズAの案件数はほぼ2倍の31%となりました。
ICMIF賛助会員であるWillis Reのインシュアテックのグローバル・ヘッドであるアンドリュー・ジョンソン(Andrew Johnston)博士は、次のように述べています。「過去10年間の世界的なインシュアテック投資の伸びは目覚ましいものでしたが、そのパターンは少数の者に非常に集中しています。たとえば、第2四半期には、調達された総資本の3分の2以上が15案件に投入されました。世界のインシュアテックの約0.5%が33億米ドル(3,808億5,300万円)を共有し、15億米ドル(1,731億1,500万円)が別の147案件に分配されました。残りの95%は資金調達はゼロでした。」
リスクの未来に焦点を当てたインシュアテックを探る最新のレポートでは、インシュアテックが最終的に保険の成果向上につながる革新を提供しようとしている方法を深く掘り下げて紹介しています。このレポートでは、インシュアテックについて以下のケーススタディを掲載しています。
- OTONOMI:貨物スペースのブロックチェーン対応パラメトリックMGA。
- Corvus:商業リスクへのAI主導のアプローチを備えたMGA。
- Arbol:パラメトリック気象リスク製品のプラットフォーム。
- Stable:食品および農業分野に価格リスク管理ツールを提供。
- Understory:ハイパーローカル気候リスク分析のためのプラットフォーム。
- Concirrus:IoTデータとAIを使用したデジタル保険商品の設計と価格設定。
- Kettle:カリフォルニアの山火事をはじめとする、AIを使用して危険を評価する再保険MGA。
- Previsico:地表水氾濫に特化した洪水モデラー。
ウィリスタワーズワトソンのオルタナティブ・リスク・トランスファー・ソリューションのマネージング・ディレクターであるジュリアン・ロバーツ(Julian Roberts)氏は、インシュアテックの将来を考察し、次のように述べています。「リスクの相互依存性はかつてないほど高まっており、すべてのサプライチェーンのほぼすべてのリンクが機能するテクノロジーとの接続性に依存しています。これは、新たなリスクであると同時に強力な対応策でもあります。テクノロジーによって実現される強化されたデータは、効果的な新しいリスクの洞察をもたらし、保険対応における無限の新しい創造性への道を開きます。」
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※ 文中の金額は1米ドル=115.41円で換算
ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。
掲載日付2021.11.24