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レポート

UNDRRの最新レポートは、リスク認識の崩壊が「自滅の連鎖」により世界の進歩を逆行させていると指摘しました

NEW YORK -November12: The fire destroyed around 100 houses during Hurricane Sandy in the flooded neighborhood at Breezy Point in Far Rockaway area on October 29; 2012 in New York City; NY

ICMIFパートナー組織の国連防災局(UNDRR)が今週発表した「グローバルアセスメントレポート(以降、GAR2022)」によると、世界は社会的・経済的進歩を失ない、2030年までに1日に1.5件の災害に直面する可能性があります。

GAR2022では、人間の活動や行動が世界中でますます災害を増加させ、何百万人もの命とあらゆる社会的・経済的利益を危険にさらしていると述べています。

5月にインドネシアで開催される「災害リスク軽減のためのグローバルプラットフォーム

(Global Platform for Disaster Risk Reduction)」に先立って発表されたGAR2022は、過去20年間で毎年350件から500件の中規模から大規模の災害が発生したことを明らかにしています。また、災害件数は、2030年までに年間560件、つまり1日あたり1.5件に達すると予測しています。

GAR2022では、これらの災害の原因は「楽観、過小評価、無敵感」に基づくリスク認識の崩壊にあり、それが政策、財政、開発の決定につながり、既存の脆弱性を悪化させ、人々を危険にさらすとしています。

アミナ・J・モハメッド(Amina J. Mohammed)国連副事務総長は、4月26日(火)にニューヨークの国連本部で行われた報告で次のように述べています。 「世界は私たちの生活、建築、投資に災害リスクを反映させることに取り組む必要があります。それが、人類を自滅の連鎖に陥らせているのです。」

「私たちは集団としての自己満足を行動に移さなければなりません。一緒になって、あらゆる場所のすべての人に持続可能な開発目標を実現に取り組むことで、予防可能な災害の発生率を下げることができます。」

「危機に瀕している私たちの世界:回復力のある未来のためのガバナンスの変革(Our World at Risk: Transforming Governance for a Resilient Future)」レポートでは、「仙台フレームワーク2015-2030(Sendai Framework for Disaster Risk Reduction 2015-2030)」で求められている災害リスク削減戦略の実施により、過去10年間に災害の影響を受け人と災害で亡くなった人の数が両方とも減少したことがわかりました。

GAR2022によると、災害の規模や強度は増大しており、過去5年間で災害により死亡または被災した人の数は、それ以前の5年間よりも多くなっています。

災害は発展途上国に不釣り合いな影響を及ぼします。先進国が災害で失うGDPが年間平均0.1〜0.3%であるのに対して、発展途上国では年間平均1%のGDPが災害で失われています。最も高いコストを払っているのはアジア太平洋地域で、毎年GDPの平均1.6%が災害によって失われています。また、開発途上国の中でも最貧困層が最も大きな被害を受けています。

災害の長期的な影響に加えて、開発途上国ではより良い復興のための努力に役立つ保険が慢性的に不足しています。1980年以降、災害関連損失については40%が保険に加入している一方、開発途上国の保険加入率はしばしば10%未満になっており、時にはゼロに近いこともあることが報告されています。

「災害を防ぐことはできますが、それは各国がリスクを理解し、時間と資源を費やして軽減する場合に限られます。」と、災害リスク軽減事務総長特別代表でUNDRR代表である水鳥真美氏は述べています。

「リスクを意図的に無視し、意思決定に反映させないことにより、世界は事実上、自らの破壊を助長しています。政府から開発、金融サービスに至るまでの重要な分野は、災害リスクをどのように認識し、対処するかを緊急に考え直す必要があります。」

気候変動の結果として、異常気象が発生するリスクが高まっています。GAR2022は、COP26で行われた適応努力を加速するという呼びかけに基づき、政策立案者がいかにして気候変動に強い開発と投資を行うことができるかを示しています。これには、リスクと不確実性を考慮した国家予算計画の改革やリスク削減を奨励するための法制度と金融制度の再構築が含まれます。また、コスタリカが1997年に開始した、災害リスクの大きな要因である森林破壊抑制し経済にも貢献する、燃料に対する革新的な炭素税など、各国が学ぶことができる例を示しています。2018年、コスタリカの電力の98%は再生可能エネルギーによるものでした。

GAR2022は、複雑なリスクを理解して削減するために必要なさまざまな専門分野を反映し、世界中の専門家グループによって作成されました。レポートの調査結果は、仙台フレームワークの実施に関する中間レビューに反映されます。中間レビューでは、仙台フレームワークの目標、ターゲット、行動の優先順位に対して各国がどのように取り組んでいるかについての国別協議やレビューが実施される予定です。

「仙台フレームワークの中間レビューが進行中である今、この報告書は、災害増加の連鎖を止めるために、各国がフレームワークの4つの優先事項について行動を加速する必要があることを喚起するものとなるはずです。」と水鳥氏は述べました。

「幸いなことに、人間の意思決定が災害リスクの最大の原因であるため、人類、特に私たちの中で最も弱い立場にある人々にもたらされる脅威を大幅に軽減する力を持っています。」と彼女は締めくくりました。

2019年11月、ICMIFとUNDRRは、災害リスクを軽減するという緊急の課題に対処するために、複数年にわたる協力を開始しました。この結果、保険業界内で被保険者を災害リスクから保護する手段としてのリスク移転商品・サービスに提供に重点を置くという観点から、災害リスク軽減のインセンティブ、認識、能力、資金調達を通じた予防に重点を置くことへとシフトできるようにするには何が必要なのかを明らかにした「保護から予防へ:災害リスク軽減における協力的および相互保険の役割」というレポートが作成され、発表されました。

これに基づいて、ICMIFは ICMIF予防ハブ( ICMIF Prevention Hub)を作成しまし、世界中の相互保険関係者の多くのリスク軽減事例を紹介しています。

ICMIFのショーン・ターバック(Shaun Tarbuck)事務局長は、 2022年5月の災害リスク軽減のためのグローバルプラットフォームで講演します。また、このイベントでは、コーポレーターズの社長兼CEOのロブ・ウェッセリング(Rob Wesseling)氏も講演します。

今年後半に開催されるICMIF 100周年記念会議(10月25〜28日、イタリア、ローマ)の講演者の1人として、水鳥真美氏が参加します。会議の議題には、「保護から予防へ」というセッションがあり、ICMIFはUNDRRと共同で開発した新しいベンチマークツールを紹介し、会員団体が予防活動の世界基準に照らして組織を評価できるようにするのを支援します。このセッションでは、仙台フレームワークの実施に役立つ新しい技術革新や予防策の実践例も紹介する予定です。

ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。
https://www.icmif.org/news_story/new-undrr-report-finds-broken-risk-perception-is-reversing-global-progress-in-a-spiral-of-self-destruction/
掲載日付2022.4.27