AMベスト(AM Best)の月刊保険誌「Best’s Review」の 9 月号は、米国の相互保険部門に焦点を当てています。

Best’s Reviewは、相互扶助部門を重要だが見過ごされがちな米国業界の一つとして、相互保険における生命/医療と財産/損害 に関する分析と解説を特集しています。

• 「米国の相互扶助は2021年の好景気後の乱気流の中で安定の鍵を見つける(U.S. Mutuals Find Stability Key Amid Turbulence Following a Good 2021）」は、AMベストの米国の生命保険/健康保険会社上位25社ランキングとPenn Mutual Life Insurance Co.の事業を詳しく紹介しています。
• 「拡大が米国の 損害相互保険の成長に拍車をかけ、順位を上位に押し上げる(Expansion Spurs Growth for US P/C Mutuals Moving Up the Charts,)」では、 損害保険相互保険会社3社における拡大の鍵を明らかにしています。

このオンライン誌は、2021 年資産規模に基づく「米国における生命/健康相互保険会社上位25社(Top 25 US Life/Health Mutual Insurers)」と2021 年正味収入保険料に基づく「 米国における損害相互保険会社上位 25社(Top 25 US Property/Casualty Mutual Insurers)」も掲載しています。

エグゼクティブ エディターのパトリシア・ボーウィンケル(Patricia Vowinkel)氏は社説で次のように書いています。「相互保険会社は保険業界の重要な部分を代表して何百万人もの保険契約者に保険を提供していますが、保険業界のレーダーに映らない傾向があります。例えば、AM ベストのデータによると、2021 年の生命/健康保険業界全体の総資産 2.1 兆米ドル(300兆1,110億円)のうち相互生命保険会社は 8.7 兆米ドル(1,243兆3,170億円)を占めており、これは業界の総資産のほぼ 25% に相当します。」

Best’s Reviewは、新しい問題と傾向、市場への影響の評価をまとめています。ICMIF 会員団体はこちらからBest’s Reviewを入手できます。

米国の 損害相互保険会社の2021 年決算は、損失の拡大により低調に推移

AMベストは 9 月にも米国の相互保険市場の分析を行ない、「損害保険会社の業績は、損害が増加する中で変動している(Results Fluctuate for Property/Casualty Mutual Insurers Amid Elevated Losses)」と題するBest’s Market Segmentレポートを発行しました。AM ベストが格付けした損害相互保険会社は、2021 年と 2022 年上半期に収入保険料を伸ばしたものの、今年に入ってからの損害への支払い増加と株式市場のボラティリティにより、純利益が著しく減少し、保険契約者剰余金が減少しました。

レポートは、広範な損害保険市場と同様に、相互保険会社はインフレの上昇、サプライチェーンの不足、活発な気象現象、より高額な再保険などの市場の課題に直面し続けていると述べています。2022 年上半期、損害相互保険会社は、前年同期の正味利益は12.0 ドル(1,715円)から純損失に転じ、 1,230 万米ドル(17億5,779万3,000円)の引受損失を計上しました。この結果は、2021 年の純利益が前年比で 17.5% 減少し、追加的な引受損失が発生したことに続くものです。

同時に、正味収入保険料は、2010 年以来毎年のように増加し続けています。近年の正味保険料の伸びは、自家用自動車保険に影響を与えることから保険会社が保険料率の妥当性をより重視していることや、特に二次災害のよう気象関連損害増加による再保険料の上昇が寄与しています。

AMベストの財務アナリストであるローレン・マグロー(Lauren Magro)氏は、「自家用自動車保険にとって、パンデミックは好ましい経済的ショックをもたらし、2020年の損失率が大幅に改善しました。しかし、2021 年の損害率は、自家用自動車損害賠償責任の損害率はが8.6 ポイント、自動車物損の損害率は 16.5 ポイント悪化しました。通常の頻度への回帰と、インフレ、サプライ チェーンの圧力、労働力不足による深刻度の上昇が影響した可能性が高いと思われます。 」

レポートは、住宅所有者の損害率が2021年に改善したが、その改善は歴史的に通常のレベルに戻ったものであり、自家用自動車の損害率の変動を相殺するのに十分ではなかったと指摘しています。

2021 年末時点で、損害保険相互保険会社の剰余金は 4,223 億米ドル(60兆3,508億9,300万円)に達し、2020 年末から 10% 増加しました。しかし、2022 年の半ばには、黒字は 3,813 億米ドル(54兆4,915億8,300万円)にまで減少し、前年の利益をほぼ打ち消しています。

AMベストのブライアン・オラーテ(Brian O’Larte) ディレクターは次のように述べています。「これらの上半期の結果に基づくと、2022年は相互保険会社にとってさらに難しい年になりそうです。保険料の改定と価格設定活動は、相互保険会社にとって引き続き優先事項です。」

この市場レポートは、http://www3.ambest.com/bestweek/purchase.asp?record_code=324053にアクセスしてください。

※ 文中の金額は1米ドル＝142.91円で換算

ICMIFサイトの英語ニュース記事（以下にリンクを表示）を許可を得て翻訳・転載しています。

https://www.icmif.org/news_story/am-best-explores-the-us-mutual-insurance-industry/

掲載日付2022.9.16