アビバ plc (「アビバ」) の資産運用会社であるアビバ・インベスターズ(Aviva Investors)は、2024 年の新ブレトンウッズ会議で、世界的な金融体系を改革し、気候変動による大災害を回避するために民間資本を動員するため、金融に関する世界的な移行計画を策定するように求めました。
アビバ・インベスターズはエジプトで開催された COP27 国連気候変動会議(The COP27 UN climate talks in Egypt)に合わせたレポートの中で、地球温暖化に伴い、今世紀末までに金融システムが崩壊する可能性など、環境、社会、経済面で前例のない結果が生じるだろうと述べています。保険会社や再保険会社は、損害額の劇的な上昇に直面し、すでに保険料を引き上げています。リスクを管理し、損失を相殺する保険のない世界では、金融システム全体が機能しなくなる可能性があります。
レポートによると、世界の気温上昇を抑えるために必要な規模の投資を実現できるのは民間資金だけですが、これまでの金融改革の焦点は公的機関や多国間機関に向けられてきました。これは、損失や被害を解決したり、気候の緩和や適応のために資金を提供するためのプロジェクトに十分な資源が不足している一方で、気候変動を悪化させる活動に多額の資金が流れ続けていることを意味します。
アビバ・インベスターズの マ-ク・バーシー (Mark Versey) CEOは、次のように述べています。「世界経済と金融システムは、世界の金融体系が目的に適合していないため、自らを破滅させる資金調達をしています。私たち、金融界の主要な機関が、金融に関する独自の金融移行計画を策定し、議題の中心に気候への配慮を据える必要があります。それにより、パリ協定と国連の持続可能な開発目標 (SDG) の達成を加速させることができます。
「金融機関が保有する世界の金融資産は、 510 兆米ドル(7京788兆円)と推定されます。金融機関は大規模な温室効果ガス排出量正味ゼロに取り組んでいますが、自力で問題を解決することはできません。私たちは、ブレトンウッズ機関、世界銀行、IMF、そして資産運用、銀行、保険業界のすべての規制・監督機関を含む大胆な改革を提唱しています。金融界は、次の 80 年に向けた効果的な枠組み(effective paradigm)を進化させるために、世界の規制当局や基準設定者による積極的な温室効果ガス排出量正味ゼロのリーダーシップを必要としています。」
アビバ・インベスターズのスティーブ・ウェイグッド(Steve Waygood)最高責任投資責任者は、次のように述べています。「金融市場参加者は、その規制や制度に大きな影響を受け、監督官庁からのシグナルに反応します。気候リスクの管理と軽減、金融の世界的なな移行計画の実現に明確に焦点を当てることで、これらのシグナルが金融機関にインセンティブを与え、支援することができます。その結果、金融機関は移行に取り組む企業に資本を割り当て、世界各国、特に発展途上国経済の緩和と適応を支援するために資金を動員することが出来るようになります。規制体制を変えない限り、これらの行動が第二次的な優先事項にとどまるリスクがあります。」
規模とスピードが必要
科学的コンセンサスが求める工程表で温室効果ガス排出量正味ゼロへの移行を実現するには、非常に大きな規模とスピードでの変革が必要です。気温は、 2100 年までに 2.8 度上昇すると予測されています。世界は、2050 年までに温室効果ガス排出量を正味ゼロにし、産業革命前の平均よりも 1.5 度高い温度上昇に収めるという目標を掲げ、世界の GDP の 90% 以上を何らかの温室効果ガス排出量正味ゼロ目標でカバーすることに合意しています。2度を超える温暖化の物理的影響は、何十億もの人々の生活と生活、自然、そして世界の安全を脅かします。
監督官庁、規制当局、政策立案者、民間部門によって気変動と持続可能性のリスクを評価・管理するための実務と枠組みが開発され、「温室効果ガス排出量正味ゼロのためのラスゴー金融同盟(Glasgow Financial Alliance for Net Zero、GFANZ)」など、歓迎すべき行動が取られています。これらは正しい方向への一歩ですが、気候変動目標を達成するために必要な指数関数的な影響のためには、システム全体の改革が必要です。
Aviva Investors Report の推奨事項の要約:
アビバ・インベスターズのレポートは、国際金融を監督するすべての機関 (IMF、世界銀行、FSB、IOSCO、IAIS、バーゼル委員会を含む) に次のことを推奨しています。
- 彼らの仕事のために2050年の温室効果ガス排出量正味ゼロへの移行計画を作成する
- 組織の任務を一新し、気候変動を中心に据える
- 機関とその監督機関の温室効果ガス排出量正味ゼロの進捗状況を毎年報告する
- 世界的な金融体系におけるの他のメンバーと協力して、包括的な移行計画を策定する
- サミットを招集して、ブレトンウッズ 80 周年前後に気候変動の緊急事態に取り組むための改革に同意し、実施を開始する
レポート全文はこちらからご覧いただけます。
マーク・バーシー氏は、ローマで開催された ICMIF 100 周年記念会議で、温室効果ガス排出量正味ゼロの未来への移行に関するセッションで講演しました。このセッションで 同氏は、温室効果ガス排出量正味ゼロの未来がどのようなものかについての考えを示し、目標を達成するための アビバ・インベスターの工程表を説明しました。彼はまた、ESG の考慮事項に対する彼の組織の全体論的アプローチが、既存の枠組みやポートフォリオに迅速な対応策を反映するのにどのように役立ったかについても説明しました。
会議後、バーシー氏は次のように述べています。「優秀な当社の社員の継続的な集中と献身により、目的主導型の仕事を通じて今後もよい変化をもたらすことが出来ると確信しています。」ICMIF 会員団体は、 ICMIF ナレッジ ハブの「温室効果ガス排出量正味ゼロの未来への移行」セッションでのバーシー氏の講演録画を視聴できます。
※ 文中の金額は1米ドル=138.80円で換算
ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。
掲載日付2022.11.11