世界的な金利の劇的な上昇は、2022 年半ばに一部の保険会社のバランスシートに大きな影響を与えました。AM Bestが発行した「 The Best’s Commentary」 によると、 バランスシートで時価評価法を採用している保険会社の利用可能な資本が大幅に減少しました。
The Best’s Commentary は、金利上昇が保険会社のバランスシートに与える影響は会計方法によって異なり、2022 年上半期の未実現損失は合計で 2,000 億米ドル(27兆8,660億円)以上であったと指摘しています。同時に、金利上昇が保険会社の固定利付資産に与える影響は採用されている会計処理方法により異なります。一部の米国の保険会社においては、法定財務報告(statutory reporting)で、投資適格債は償却原価(amortised cost)で評価され、一部の非投資適格債の評価には市場価格(market value)が用いられるため、その影響は保有する債券の種類によっても異なっていました。分析によると、償却原価法を採用している保険会社は、利用可能な資本に影響を与えていないことがわかりました。
「AMベスト のアプローチは、これらの指標とツールを一貫性を持たせることです。しかし、今回の状況では、金利上昇が債券資産ポートフォリオ全体に及ぼす極端なものと、まったく影響を示さない極端なものとがあり、選択が正反対になっています。」と AM ベストのトーマス・マウント(Thomas Mount) シニア ディレクターは述べています。
The Best’s Commentaryでは、未調整の利用可能資本を用るとBCAR 評価に重大な影響を与える場合あるいは固定利付債を損切り売却する必要が十分に把握できない場合、AMベストの格付けアナリストが保険会社の利用可能資本を手動で調整できると注釈しています。さらに、ストレス テストや緩和策(mitigation plan)に加えて、金利上昇に関連リスクの見解に関する保険会社の見解もAM ベストの格付け手順におけるの企業リスク管理の一環です。
財務レバレッジは、金利上昇の影響によって歪められる可能性があるもう 1 つの指標です。基本的に、財務レバレッジは、企業が利用可能な総資本に対して未払いの負債の額を示します。会計上の違いを反映するために、AM ベストは、金利上昇の影響を含む利用可能な資本と含まない資本を用いて、財務レバレッジ指標を確認します。これらの計算結果が大きく乖離している場合は、保険会社との追加的な対話が必要になる場合があります。
AM ベストは、ほとんどの保険会社が強力な初期資本を有し、プラスのキャッシュ フロー、追加の流動性ソース、強力なリスク管理、固定利付債券を満期まで保有する能力を考慮すると、格付けの多くが金利の上昇によってマイナスの影響を受けるとはないと考えています 。
このレポートは、http://www3.ambest.com/bestweek/purchase.asp?record_code=325623yにて確認できます。
※ 文中の金額は1米ドル=139.33円で換算
ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。
掲載日付2022.11.23