日本の協同組合には、長年お互いに協力し合ってきた歴史があり、1956年に設立された日本協同組合連絡協議会(JJC)を通じて主に連携を図ってきました。2018年4月1日に、これらの協力をさらに促進するため、JJCは日本協同組合連携機構(JCA)になります。
JJCは60年以上にわたり、協同組合相互の連絡・提携、共通する問題の解決、海外協同組合との連携促進等を行ってきましたが、全国・都道府県・地域各段階における協同組合間連携をさらに促進するため、JJCでは協同組合間連携のための新たな連携組織の必要性やそのあり方について検討しました。
1年半にわたる検討の結果、協同組合が地域で果たす役割・機能の可能性を協同組合セクター自らが広げるために、JJCは会員の総意により、新たな連携組織へ移行することとなりました。
新たな連携組織の設立趣旨
協同組合を取り巻く状況と課題
経済がグローバル化する中、貧富や機会の格差とその拡大、社会の分断や孤立などが国際的な課題となっています。加えて、日本では人口減少・少子高齢化などが以下のような社会的課題を地域に生み出しています。
1. 地場産業の衰退・過疎化などによる地方の活力低下
2. 地方での乏しい就労機会や公的負担の増加など若年層に厳しい環境
3. 財政悪化により行政だけでは社会的課題が解決困難な状況
また、協同組合に対して、国際社会においてはユネスコ無形文化遺産への登録やSDGs(持続可能な開発目標)に見られるように、貧困の根絶・雇用創出・社会的統合・持続可能な地域社会の創出等へ協同組合の果たす役割が期待されていますが、日本では協同組合のあり方について様々な議論がみられます。
こうした状況に鑑み、JJCは「経済的・社会的・文化的に共通して必要とするものや強い願いを充たすことを目的」とする協同組合は、連携を強化することにより地域の課題に取り組み、協同組合が“持続可能な地域のよりよいくらし・仕事づくり”に取り組むことが重要と考えました。
日本における協同組合の事業は、農林水産業・購買・金融・共済・就労創出・福祉・医療・旅行・住宅など多岐にわたり、重複はあるものの6千5百万人という多くの組合員が参加しています。一方、各協同組合はそれぞれに発展してきた歴史があり、依拠する法律や主務官庁も異なっています。こうしたこともあり、生協や農協といった個別の協同組合への認知はあるものの、「協同組合」という組織や活動への認識を社会一般に広げる必要があります。
従来から協同組合間の連携が進められてきており、全国レベルではJJCおよびIYC記念全国協議会という協議体による連携推進を行ってきました。しかし、協同組合が取り組む課題が質・量ともに複雑化・増加するなかで、よりいっそうの役割を果たすためには充分な体制を取り機能を充実させることが必要となりました。
都道府県レベルでも連携が行われてきましたが、協議会等の連携組織への参加団体や連携活動の内容は都道府県により様々です。
JJCによれば、このため新たな連携組織が必要とされるに至りました。協同組合が“持続可能な地域のよりよいくらし・仕事づくり”を行なうには、地域の問題に取り組むことが不可欠です。しかし、個々の協同組合が自力でできることには限界があります。JJCは、協同組合が今まで以上に全国・地域で連携を強化し、協同組合自らが地域で果たす役割・機能の可能性を広げていくために、日本の協同組合を横断し共通の価値を高める連携組織の整備・充実が必要である、との結論に至りました。
新たな連携組織の役割・機能
新たな連携組織の名称は、一般社団法人日本協同組合連携機構(英語名 Japan Co-operative Alliance、略称 JCA)です。協同組合の理念・価値・原則に基づき、新たな連携組織は協同組合間連携を促進します。これにより、“持続可能な地域のよりよいくらし・仕事づくり”に主体的に取り組むことで地域・コミュニティづくりに貢献するとともに、国内外・地域社会に協同組合の価値・事業を発信します。
これまでのJJC事務局や協同組合間連携業務の実績を勘案し、一般社団法人JC総研(以下JC総研)を改組した上で、新たな連携組織とします。
新たな連携組織では、以下の三つの主要な機能を備えます。
1. 協同組合間連携等(推進・支援)
2. 政策提言・広報(発信)
3. 教育・研究(把握・共有・普及)
JCAは暮らし・仕事と地域を守る活動を中心とした行政・NPOなど他団体との連携も進めます。さらに国際協同組合同盟(ICA)など国際機関との連携を行ない、JCAの役割等について国際社会への情報発信を行います。JCAはまた、従来の枠組みに入らない、あらたな協同組合の設立を支援する機能も果す予定です。
JCAは、組合員の暮らし・仕事と地域を守るための政策提言や渉外活動に積極的に携わり、協同組合の姿を社会に伝え協同組合への理解や参加を促進する情報発信・広報機能を担います。
JCAの業務の大きな割合を占めるのが、組合員・協同組合役職員等への教育・研修です。大学寄付講座・義務教育の充実など一般への教育も提供します。さらに、協同組合およびそれに関連する調査・研究・データベース機能も持つ予定です。
新組織は、国連経済社会局社会政策開発室のダニエラ・バス(Daniela Bas)室長、国際協同組合同盟(ICA)アリエル・グアルコ(Ariel Guarco)会長、国際労働機関(ILO)田口明子駐日代表からの支援を受けています。
国際協同組合保険連合(ICMIF)の日本会員からは、全労済、コープ共済連、日本共済協会、JA共済連がJCAの会員になる予定です。
ショーン・ターバックICMIF事務局長は、来るべきJCAの立ち上げに次のような賛辞を贈りました。
この新しい連携組織の設立に携わったすべての人たちに心からお祝いを申しあげます。これは日本の協同組合運動にとって非常に重要な一歩であり歴史的な瞬間です。日本の協同組合、とりわけICMIF日本会員団体は、地域社会と関わり続けてきた長い歴史があり、特にそれらの会員団体による自然災害からの地域社会の復興への取り組みが思いおこされます。日本の協同組合も世界の協同組合と同様に、長年にわたりひとびとや地域社会の回復力を向上させ、協同の精神を促進するべく取り組んできました。 JCAの成功を心より願っています。
JCAの詳細については、こちらをご覧ください。