8月12日は1999年に国連総会の決議で採択された「国際青少年デー」です。2018年国際青少年デーのテーマは、「青少年に安全なスペースを」です。
2018年は、表現の自由、相互尊重、建設的な対話における安全なスペースの役割について考えることにより、青少年の参画とエンパワーメントを促進することを目的としています。ICMIFは会員制組合/相互扶助組織/協同組合からなる多くの会員団体を招待し、多様なイニシアティブや社会貢献(CSR)活動を通じて、若者に安全なスペースを提供するためのさまざまな形の取り組みについて共有しました。
国連は、物理的な、あるいは仮想上の安全なスペースを利用しアクセスできれば、イノベーションや創造のための共通の領域や機会が与えられ、青少年の可能性を高めることが可能だとしています。若者は、共に集まり、多様なニーズや関心に関わる活動に取り組み、意思決定プロセスに参画でき、自由に自分を表現できる安全な場を必要としています。
以下はICMIF会員団体である世界中の協同組合/相互扶助の保険組織が取り組む安全なスペースづくりの例です。
NTUCインカム(シンガポール)
シンガポールを拠点とするICMIFの会員であるNTUCインカム(以下「インカム」)のコミュニティ開発部門、インカム・オレンジエイドは先般、主力事業のインカム・オレンジエイド未来開発プログラム(FDP)を2年間(2018年から2019年まで)延長すると発表しました。これは、ポリテクニックや技術教育学院(ITE)で学ぶ低所得層のシンガポール人学生を対象に、奨学金や金融リテラシー、人格形成訓練を提供した、過去3年間にわたる取り組みの成功を受けたものです。
この延長プログラムでは、恵まれない若者の学費と生活費を支援するために、新たに奨学金の枠を800人増やしました。また、現在および過去のFDP利用者のさらなる支援のために、コーチングやファシリテーター研修を含む修了生プログラムも導入しました。
インカムの最高マーケティング責任者であるマーカス・チュウ(Marcus Chew)氏は次のように述べています。「FDPの延長は、競争が激化する現在の状況において、低所得層の若者が公平な立場に立てるよう手助けし、本人やその家族が不利な状況から脱却できるための力を与えるという、インカムの積極的な関与を明確に示しています。修了生プログラムは、この目的を念頭において導入されたものであり、若者が将来に向けて一層の備えができるよう支援していきます。」
CARD MRI(フィリピン)
CARD MRI(農業農村開発センター・相互支援機関グループ)は、主力プログラムである「一家族に一人の学士」の下で、全国の顧客やその子女を対象としたCARD奨学金プログラム(CSP)や、落ちこぼれゼロ・プログラムを通じて、72万9,908人の奨学金枠と教育援助を提供しました。CSPは18年間にわたり、青少年の教育ニーズ(特に中等・高等学校、職業訓練プログラム、大学生が対象)を支援してきました。一方、落ちこぼれゼロ・プログラムは、顧客の子女が初等教育を修了することを目的とした支援です。「CARD MRIは、一家族に一人の学士プログラムを通じて、全国のすべての顧客世帯で少なくとも1人が大学を卒業できるようにしています」と、CARD MRIの創設者兼会長のハイメ・アリストトゥル・B・アリップ(Jaime Aristotle B. Alip)博士は語っています。
「奨学金は、教育を通じて生活水準を向上しようとする顧客とその子女を支援する手段でもあります。教育を通じて夢を実現しようとする学生がいる限り、当社はこの支援サービスを続けていくつもりです」と、同グループのパートナーシップ・教育副部長であるジャン・ポーリーン・B・ランディチョ(Jean Pauline B. Landicho)氏は述べています。
CARD MRIは毎学年度末に、卒業するCARD奨学生に同グループでの就職をオファーしています。21の機関からなるCARD MRIは、あらゆる専門分野の志願者に門戸を開いています。若者とその家族が貧困から脱却できるよう支援するうえで、教育と雇用は重要な要素となっており、ひいてはそれが彼らに大きな安心をもたらしています。
アマナ・タカフル(スリランカ)
アマナ・タカフルは2017年の年次報告書の中で明らかにした最新のCSR活動において、最も重要なプログラムとして、ワラハンドゥワ女子学校(ゴール県)の生徒を対象としたリーダーシップ・人格形成プログラムを紹介しています。同社は、若年世代は国の将来にとっての要であり、その才能と教養は生徒自身、ひいてはスリランカの国全体にとっての持続的かつ確固たる基盤を築くうえで有益になると認識しています。生徒たちへの訓練は、若者により安全で確実な将来をもたらすうえで役立つ、人格形成やチーム育成、コミュニケーションスキル、意思決定能力、心身の強さに重点が置かれています。
CIC保険グループ(ケニア)
CIC保険グループは傘下の財団を通じて、青少年の安全を確保することにより、社会に良い影響を与えていく手助けをしています。CIC財団は2016年に、国内の公立小学校から選ばれた優秀で経済的に恵まれない子どもや、脆弱な立場にある孤児院の児童などを対象とした、中等教育奨学金を提供しました。この奨学金制度はまだ小規模ですが、同財団は今後拡大していく予定です。財団の評議会は、全地方からの奨学生を精選する仕組みづくりに取り組んでいます。CIC財団は、社会をより良く持続的に変革するうえで、教育が重要な要素であると認識しています。
NFUミューチュアル - 農場安全性向上基金(英国)
NFUミューチュアルは、若年農業者の農業作業場での安全意識向上を目的として、2014年に農場安全性向上基金(公益財団)を設立しました。同基金は、大学機関や若年農業者の部会、英国全土の幅広い農業者組織と密接に連携して、次世代を担う農業者の農場安全性に対する意識向上や、リスクテイク行動の変容に取り組んでいます。
3年前より、農場安全性向上への入門コース(半日)の実施に大学や学生と取り組んできました。現在、このコースは英国全土の農業大学で実施されています。革新的で魅力のあるこのコースの受講者は、2015年5月以降3,000人以上に達しています。
同基金によるこの教育プログラムは拡大を続けており、次世代の訓練や支援への貢献が認められ、ビジネス・イン・ザ・コミュニティによる「責任あるビジネス大賞」や、英国PR協会(CIPR)が主催する「プライド・ミッドランズ・アワード」を受賞するなど、英国全体で認知されるようになっています。
全労済(日本)
全労済は2008年2月より、災害リスク対策への意識啓発を目的とした講演会形式の「防災カフェ」を開催しています。「楽しく学べる」このイベントは、日本各地で開催されています。「防災カフェ」では、非常食の試食から専門家による講演、災害科学実験ショー、防災ゲームなど、子どもや大人、家族ぐるみで参加できるさまざまなプログラムがあり、これらを通じて自然災害への備えやより安全な対策ができるようになります。
また、全労済は2012年11月より、子どもを対象とした「よみきかせ会」を開催しています。この「よみきかせ会」は、東日本大震災で被災した子どもたちの心のケアと健全な育成を目的として始まりました。子どもが地震の備えを学び、防災意識を向上させるための絵本も制作されました。全労済は日本全国で、青少年やその保護者を対象とした防災・災害軽減のためのイベントを実施しています。
JA共済連(日本)
JA共済連は、事故防止のための教育サービスと、事故や自然災害後の相互扶助サービス、つまり共済事業とCSR活動は表裏一体であると考えています。JA共済連は、青少年を含む組合員の健康や安全、福祉の向上を目的とした多くの活動を実施しています。
その1つとして、東北ユースオーケストラがあります。これは2011年の東日本大震災で最も被害が深刻だった東北3県(岩手県、宮城県、福島県)に住む小学生から高校生までの青少年が団員となっているオーケストラです。東北ユースオーケストラの創設者は、同オーケストラの活動は単なる演奏だけに留まらず、青少年の成長を促進し、明るく新しい未来を作り出す、安全で信頼できる場になると考えています。
青少年を対象としたJA共済連のその他の取り組みとしては、中高生向けの自転車交通安全教室があります。
コーポレーターズ(カナダ)
コーポレーターズはカナダの青少年を支援するための複数のプログラムに参画しています。この1つとして、エナクタス・カナダ(Enactus Canada)と共同で実施している、若者のメンタルヘルス支援と地域社会における持続可能な解決策の構築のためのプログラムがあります。
カナダの大学生にとって最大の問題はメンタルヘルスとされ、学生の65%が強い不安に悩まされています(出所:国立大学健康アセスメント(NCHA))。コーポレーターズは、18~25歳およびそれ以上の若者のメンタルヘルス支援の向上のための解決策を見つけるべく、エナクタス・カナダとパートナーシップを締結しました。
コーポレーターズはエナクタスを通じて、大学の若きリーダーに解決策を特定したり構築したりするためのスキルや手段を提供する手助けをしています。当初2年間の試行期間の目標では、自分自身のメンタルヘルスの維持を向上させ、他者の精神的健康にも貢献できる、より溌溂とした若者を育成することに重点が置かれます。
コーポレーターズが支援する、青少年に安全なスペースを提供するプロジェクトとしては、他に「キッズ・ヘルプフォン」があります。カナダ初の試みであるこの携帯メールサービスは、青少年が自分の望む方法でメンタルヘルス支援を受けられるようにしたプロジェクトで、コーポレーターズは創設パートナーにも名を連ねています。
キッズ・ヘルプフォンの調査によると、以下のことが明らかとなっています。
青少年の42%が、話すよりもメッセージで悩みを打ち明けたいと考えている。
青少年の71%が、悩み相談をする際にメッセージ方式を好んでいる。
言葉によらないプラットフォーム(ライブチャットなど)の方が、深刻かつ高リスクのメンタルヘルス問題が発見できる可能性が高い。
青少年は無料で記憶しやすい電話番号にテキストメッセージを送ることができます。テキストはデータ通信契約やインターネット接続が不要なため、こうしたサービスが限定される遠隔地や孤立した地域の若者にとっては特に重要となります。
コーポレーターズの持続可能性・市民権担当ヴァイスプレジデントのバーバラ・ターリー・マッキンタイヤー(Barbara Turley-McIntyre)氏は、次のように述べています。「キッズ・ヘルプフォンによる緊急テキスト相談ラインの創設パートナーとなれて光栄です。この相談ラインは、メンタルヘルスのための効果的なサービスや手段を若者に彼らが望む形で提供するものです。このパートナーシップにより、18~25歳を中心とする若者の精神的健康をより適格に支援でき、結果的に強靱な社会を形成する手助けができます。」
コーポレーターズは、上記をはじめとするプログラムでの取り組みやパートナーシップを通じて、カナダの青少年に対する支援責任を果たしているとしています。
ICMIFの5-5-5マイクロ・インシュランス戦略
ICMIFの5-5-5マイクロ・インシュランス戦略は、5年間で5カ国(インド、フィリピン、ケニア、スリランカ、コロンビア)において、保険未加入の低所得層500万世帯(2,500万人に相当)を対象に保険を普及することを目的としています。この戦略は、貧しい人々が貧困から脱却できるようにすることを最終的な目標としています。これまで保険未加入だった世帯に相互扶助のマイクロ・インシュランスを提供することにより、青少年は保護者の死亡などの不幸に見舞われても保険給付金による収入源が確保され、学業を続けて成功することも可能となります。保険未加入の青少年は途上国の人口の相当部分を占めるため、5-5-5戦略を拡大することで、相互扶助のマイクロ・インシュランスにより、安心がもたらされる青少年が増加します。
ICMIFのヤングリーダー・フォーラム
ICMIFは会員団体の若者の支援も積極的に行っており、そのための主な取り組みとして、ヤングリーダー・フォーラムを設置しました。同フォーラムは、ICMIFの各会員団体において将来的に組織を担うと嘱望される若手職員(通常20~35歳)を対象としたネットワークです。このフォーラムは、会員の専門能力や人格形成に重点を置き、学習や成長のための安全かつ支援となる場を提供するものです。
ICMIFヤングリーダー・フォーラムの詳細については、ビジネスインテリジェンス担当ヴァイスプレジデントのベン・テルファー(Ben Telfer)にお問い合わせください。