2018年10月17日は、国連が定めた貧困撲滅のための国際デーです。ICMIF基金はこの日に際し、ICMIFの5-5-5マイクロインシュランス開発戦略を通じた貧困撲滅への様々な貢献の形について紹介します。
今年は「誰一人も取り残さない開発を通じて、すべての人の人権と尊厳が尊重されるインクルーシブな世界を創る」がテーマとなっています。
国連はウェブサイトで以下のように述べています。「極度の貧困と人権は根本的につながっており、貧困状態で暮らす人々は過度に人権侵害を受けているという事実を喚起することが重要です。開発から最も取り残された人々に手を差し伸べ、あらゆる側面で貧困を克服する上で不可欠であるソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)を実現するには、各国政府の政策だけでは不十分です。毎年10月17日を貧困撲滅のための国際デーとすることにより、貧困状態にある人々に手を差し伸べ、あらゆる背景を持つ市民らと団結し、極度の貧困を撲滅するための優先事項を取り組むことの重要性を強調します。」
「貧困撲滅のための国際デーは(中略)、極度の貧困状態で暮らす人々や開発から取り残された人々が、自身が対象となるプログラムや政策の立案や実施など、あらゆる貧困克服の取り組みに積極的に参画し、原動力となれるようにすることを目的としています。すべての人が人権を余すところなく享受し、尊厳を持って暮らすことができるインクルーシブな世界を実現することは、こうした当事者と真の連携を築き育むことによって初めて可能となります。」
ICMIFの5-5-5マイクロインシュランス開発戦略は、新興5カ国(コロンビア、インド、ケニア、フィリピン、スリランカ)において新たに500万世帯に「マイクロ相互保険」(協同組合・相互扶助組織によるマイクロインシュランス)を提供することを目指す5カ年プロジェクトです。低所得層地域の人々を対象とする5-5-5戦略は、日常的に直面するリスクを補償する仕組みの提供を通じて、地域を強靭化することを最終的な目標に据えています。これまでにインド、ケニア、フィリピンの3カ国でマイクロインシュランスの普及拡大計画が始動しました。
低所得層の貧困化を防止できるマイクロインシュランス
5-5-5戦略を通じて低所得層地域に手の届く保険を提供することにより、貧困の悪循環から脱却する手助けを行い、脆弱な地域社会にセーフティネットを提供します。例えば、インドの国家農村保健ミッション(NRHM)は2012年、入院患者が出るだけで貧困層に転落する世帯が25%に上るとしています。適切で手頃な価格で治療費をカバーできる医療保険にアクセスできれば、高額な医療費で世帯が貧困化する可能性を大幅に低減することができます。また、保険普及率が高い国ほど、災害後の経済復興が早く、将来の災害に対する強靭性も備えることができ、その結果生活水準が向上することは広く認識されています。
5-5-5戦略で将来的に保険対象人口を拡大
一方、保険を提供するだけでは、貧困層の生計向上や貧困軽減に必要なインパクトを十分与えることはできません。マイクロインシュランスを通じて真に恩恵をもたらすには、地域社会に寄り添い、人々の個別のニーズを汲み取り、問題に直結した商品をタイムリーに提供できなければなりません。
従って5-5-5戦略では、保険の役割に対する意識啓蒙、地域社会との信頼構築、リスクを担保する相互扶助/協同組合の保険組織のガバナンスにおける地域住民の参画、ジェンダー平等の促進、保険を身近なものにし、保険対象人口の長期的拡大を後押しするリスク軽減戦略の提供に重点を置いています。
例を挙げると、インドにおける5-5-5プロジェクトはダーン・ファンデーション(DHAN、以下「ダーン」)と共同実施されており、新たに106万世帯に生命、医療、家畜保険による保障を提供することを目指しています。ダーンの取り組みには、保険リテラシー教育プログラムも含まれ、低所得層の加入者が保険契約の価値や、もしものときにどのようなメリットがあるかを理解できるようにしています。事業初年度で3,573回の講習会が実施され、5万4,695人の会員や保険加入者が参加しました。
ケニアでの5-5-5 プロジェクトは、同国の保険協同組合であるCIC保険グループ(以下「CIC」)と共同実施されており、今後5年間にわたり、新たに25万人の低所得農家に手頃なマイクロインシュランスを普及させることを目指しています。同事業では、保険を通じて手頃なリスク軽減手段を提供するだけでなく、家畜保険契約に保険金受取人を対象とした金融リテラシー教育や獣医によるサービス、畜産方法の改善指導など、ピンポイントな取り組みを盛り込んでいます。
ICMIFのプロジェクトをダーンやCICの事業の一部として実施することにより、相互扶助/協同組合の保険組織と貧困状態で暮らす人々の間で真の連携が築き育まれ、すべての人が人権を余すところなく享受し、尊厳を持って暮らすことができるインクルーシブな世界の実現を目指すことができています。
5-5-5戦略は、国連の持続可能な開発目標(SDG)の目標1である「貧困撲滅」だけでなく、特に目標2「飢餓をゼロに」、目標3「健康と福祉を」、目標5「ジェンダー平等」、目標13「気候変動」も支援していきます。
ICMIFの5-5-5 マイクロインシュランス開発戦略はICMIFが2015年に創設し、英国イングランドとウェールズで慈善団体として登録されており、ICMIF基金が管理しています。5-5-5戦略は主にICMIFの加盟団体からの直接支援を受けており、これまでに15カ国21団体が支援に参加しています。
写真:ダーン(インド)の保険リテラシー講習会で話すガヤトリ・サクシラヤン氏