先般発表されたロイズ保険組合と経済ビジネスリサーチセンター(CEBR)の共同報告書によると、2018年における世界の保障ギャップは推定1,625億ドルに上りました。これは最脆弱国で暮らす人々の生計にとって大きな脅威となっています。
この報告書は「世界が抱えるリスク:保険ギャップの是正」というタイトルで、新興国における保険普及率は先進国の半分であるとしています。世界全体の保障ギャップのほぼ全て(1,600億ドルで全体の96%)が所得の低い国で占められています。保険普及率が最も低い水準にある国々の多くは、気候変動などのリスクに最もさらされ、復旧・復興に必要な資金調達が最も困難な国でもあります。保険普及率が1%未満の国には、バングラデシュやインド、ベトナム、フィリピン、インドネシア、エジプト、ナイジェリアが挙げられます。
また、ロイズ都市リスク指標によると自然災害による経済的損失は世界全体で年間 1,650億ドルまで拡大しており、気象や危険、場合によっては気候変動により、この損失は今後も増加するだろうと予測しています。
しかし、この保障ギャップの是正はほとんど進んでいません。2012年版の同報告書では、保険で保障されていない資産額は世界全体で1,680億ドルとされており、過去6年間で3%も是正されていません。
同報告書は、災害の影響は強靱化に投資することにより軽減することができると結論付けており、リスク資金調達が災害後の流動性提供や政府財政の保障、納税者の負担軽減を通じて重要な役割を果たすことができると強調しています。
ロイズ保険組合のブルース・カーネギーブラウン(Bruce Carnegie-Brown)会長は、次のように述べています。「保険は財政的危機に迅速に対応できることが多く、災害復旧において重要な貢献役となります。インドネシア・スラウェシ島を襲った地震・津波被害時には、被災地に資金流動性をもたらすという保険が持つ重要な役割が再認識されました。革新的な保険ソリューションを通じて、各国政府に災害後迅速な財政的救済を提供し、国民の納税負担を軽減することができます。保険がなければ、災害による経済や生活への影響は大幅に増大するでしょう。」
ICMIFは2016年6月、新興5カ国(コロンビア、ケニア、インド、フィリピン、スリランカ)で手頃な価格の保険ソリューションへのアクセスを拡大することにより、こうした保障ギャップを縮小する取り組みを開始しました(うちインドとフィリピンは、ロイズ報告書で気候変動などのリスクに最もさらされている国に含まれています)。
ICMIFの5-5-5マイクロインシュランス開発戦略は、上記5カ国で低所得層の500万世帯に「マイクロ相互保険」(協同組合・相互扶助組織によるマイクロインシュランス)を新たに提供することを目指す5カ年計画です。この5-5-5戦略は、5カ国で安価な保険商品へのアクセスを拡大するだけでなく、地域社会との信頼関係構築や、保険対象人口の長期的拡大を後押しするリスク軽減戦略の提供を通じて、保険の役割に対する意識啓蒙も目指しています。
5-5-5戦略の国別プログラムは、既にインド、ケニア、フィリピンで始動しています。インドでは、ムンバイに拠点を持つアップリフト・ミューチュアルズとダーン・ファンデーションとの共同実施により、5年間で新たに合計126万世帯に手頃な価格で医療、生命、家畜保険を普及させることを目標としています。フィリピンでは、プロジェクトパートナーであるリマンジとの共同実施を通じて、マイクロ保険共済組合による普及拡大を後押し、新たに100万世帯にマイクロ生命保険を提供することを目指しています。ケニアでも、CIC保険グループとの共同実施により、新たに25万人の農家にマイクロインシュランスを普及させることを目指しています(プロジェクト始動に関する記事はこちら)。
ICMIFの5-5-5マイクロインシュランス開発戦略はICMIFが2015年に創設し、英国イングランドとウェールズで慈善団体として登録されており、ICMIF基金が管理しています。5-5-5戦略は主にICMIFの加盟団体からの直接支援を受けており、これまでに15カ国21団体が支援に参加しています。