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レンスフォーシェクリンガーとコーポレーターズ、UNEP FIと保険業界のパートナーシップに参画、気候リスクの理解とTCFD勧告対応に取り組む

French_floods_-_resized_0国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)は2018年11月13日、世界の大手保険事業者16社とのパートナーシップ締結を発表しました。このうち、カナダのコーポレーターズ(The Co-operators)とスウェーデンのレンスフォーシェクリンガー(Länsförsäkringar Sak)の2組織は、国際協同組合保険連合(ICMIF)の会員団体です。この16社の保険料収入は世界全体の約10%を占め、運用資産総額は5兆ドルにのぼります。このグループは気候変動が保険事業に及ぼす影響をよりよく把握するための新世代のリスクアセスメントツールの開発を目標に掲げています。

UNEP FIの先般の報道発表では、このパイロットグループが開発する保険業界向け気候変動リスク分析ツールは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の勧告に沿った気候リスク開示を先導するためのものとしています。そのため、最も先進的かつ将来を見通した気候シナリオなど、最新の気候科学の知見活用が必要となります。リスク管理が事業の中核である保険業界にとって、これを把握することは極めて重要です。

レンスフォーシェクリンガーのアン・ソンマー(Ann Sommer)CEOは同社のパートナーシップ参加について、次のように述べています。「この国際的なパイロット事業に参画するということは、金融セクターにおける気候リスク情報およびそのモデル化の標準策定に関わるということを示します。他の大手企業と協力して世界的な視野で経験を共有し、TCFD勧告と気候リスクに関する理解を深めることは、当社にとっても貴重な機会といえます。」

コーポレーターズのロブ・ウェッセリング(Rob Wesseling)社長兼CEOは次のように述べています。「現代において、気候変動は将来を決定付ける問題です。今後一層重要なリスクとなり、これからの世代の金融、社会、環境の繁栄に影響を及ぼしていくこととなるでしょう。我々はリスクの専門家として、この問題に見て見ぬふりをすることはできません。このTCFDパイロット事業を通じて、世界の大手保険会社との協力の下、気候関連リスクをガバナンスや戦略、商品・サービスに組み込み、低炭素化の機会を捉え、気候変動の最中でより強靱な社会を実現するためのソリューションを立案することを目指しています。」

コーポレーターズはその一環として、UNEP FIが今週フランス・パリで開催したグローバル・ラウンドテーブル(隔年)に合わせて、「気候に関するコミットメント」を発表しました。このコミットメントは、同社が気候関連リスクに対応し、低炭素化経済のビジネス機会を捉えるために講じる対策の概要を示したものです。

UNEPのエリック・ソルハイム事務局長は、次のように述べています。「保険業界は何世代にもわたり、リスクを把握、軽減し、価格付けして引き受けることにより、社会の早期警戒システム、リスクマネージャーとして機能してきました。気候変動リスクは増大しつつあり、世界中の社会経済にとって深刻な脅威となっており、保険業界は現在これに対して強い警鐘を鳴らしています。」、「保険で担保できないと、その代償は社会が負担しきれない規模になります。だからこそUNEPは主要保険会社と連携して、リスクの把握と軽減、気候ビジネス機会の捕捉、そして保険で担保された、強靱で持続可能な世界の実現に取り組んでいるのです。」

UNEP FIは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最近の報告書の中で、地球温暖化を(2016年のパリ協定で規定された1.5~2℃の範囲ではなく)1.5℃以内に抑えるためには、急速かつ大規模な前例のない変化が必要だとされていると指摘しています。気温上昇により海面上昇が加速し、異常気象が増大しており、社会や企業、自治体、国家は新たな形でより高レベルのリスクに直面しています。

イングランド銀行のマーク・カーニー総裁が議長を務める金融安定理事会は、企業が投資家や銀行、保険会社、その他の関係者に対する気候関連財務情報の開示において使用する自主的基準を策定するよう、TCFDに付託しました。そして、2017年6月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議において、「ガバナンス」、「経営戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4本柱からなる最終提言が示されました。

UNEP FIは、保険事業者と共同開発されるパイロットツールと指標は、保険会社のポートフォリオにおける気候関連の物理的リスクと移行リスク評価のための最新のシナリオ分析を組み込むとしています。保険で担保することにより、リスクを軽減するインセンティブが生まれ、リスクへの価格付け、リスク回避のための投資が進み、社会や企業、政府への財政影響の緩衝効果がもたらされます。同時に保険会社は、30兆ドル以上のグローバル資産を運用する主要投資家でもあり、この取り組みは保険会社のポートフォリオと商品が抱える気候リスクを評価することに重点を置いています。

UNEP FIによると、保険会社が抱える気候関連リスクのエクスポージャーについて信頼できる情報があれば、金融システムが強化され、あらゆるセクターの取引先に質・量ともに充実した情報開示を促すことができます。また、社会・経済の低炭素化や気候変動に対する強靱化に必要な保険商品や投資の拡大を後押しすることができるとしています。

UNEP FIは今回の保険会社との取り組みに先立ち、金融機関投資家とも、金融セクターによる気候変動ノウハウ向上とTCFDの提言採択を目的とした同様のパートナーシップを呼びかけました。2019年9月には国連事務総長がパリ協定の目標達成のための野心的な気候行動を促すべく、ニューヨークで各国首脳を集めて気候サミットを開催しますが、UNEP FIは本取り組みの成果を通じて、こうした主要な気候関連プラットフォームや取り組みを後押しすることを目指しています。

取り組みに参加する保険会社のメンバー各社

今回、国連との連携作業に参加する以下の各社はすべて、UNEP FIが推進する持続可能性に関するグローバルベストプラクティスの枠組みであり、国連と保険業界間の連携イニシアティブである「持続可能な保険原則(PSI)」に署名済みです。
アリアンツ(ドイツ)、AXA(フランス)、IAG(オーストラリア)、インタクト・ファイナンシャル(カナダ)、レンスフォーシェクリンガー(スウェーデン)、マフレ(スペイン)、MS&AD(日本)、ミュンヘン再保険(ドイツ)、NNグループ(オランダ)、QBE(オーストラリア)、損保ジャパン日本興亜(日本)、ストアブランド(ノルウェー)、スイス・リー(スイス)、TD保険(カナダ)、コーポレーターズ(カナダ)、東京海上日動(日本)

国連環境計画(UNEP)の持続可能な保険原則(PSI)について

「持続可能な保険原則(PSI)」は、保険業界が環境・社会・ガバナンス面のリスクと機会に取り組むグローバルな枠組み、また保険業界のリスクマネージャー、保険者、投資家としての役割を強化し、強靱でインクルーシブ、持続可能な社会・経済作りに貢献するグローバルな取り組みとして、国連事務総長と保険会社が賛同・署名したものです。同原則は、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が策定し、2012年の国連持続可能な開発会議で発表され、国連と保険業界間における最大の連携イニシアティブとなっています。

ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。
記事日付 2018.11.29